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2007年2月14日

薬事法関連の広告審査について Overture (Yahoo!) と Google を比較した

先の記事「薬事法・健康増進法逃れに利用される Google AdSense」では、コンテンツ連動型広告 (Google AdSense) あるいは検索連動型広告 (Google AdWords) におけるキーワードの登録について、薬事法などの法規に抵触していないかチェックする責任が広告主や Google にはあるだろうと述べた。これについては、Google だけではなく、Overture (Yahoo! 傘下) も同様のサービスを展開しており、同様の議論が当てはまる。検索連動型広告では Google よりも日本の市場占有率は上であり、Yahoo!、MSN、エキサイトなど、およそ Google 以外の主要な検索サービスに Overture が導入されている。そこで、両社の比較を試みた。

GoogleYahoo! JAPAN の検索サービスにおいて、成分名または疾患・症状名を検索キーワードとし、当該成分を含む健康食品の広告リンクが現れるかどうかをテストした。疾患・症状名から広告リンクが現れるようだと、薬事法関連の広告審査や自主規制が甘いのではということになる。一方、疾患・症状名からも成分名からも広告リンクが現れないようだと、そもそも広告が存在しないのではということになる。つまり、成分名では広告リンクが現れ、疾患・症状名では現れない場合、薬事法関連の審査や自主規制が機能している可能性が認められることになる。

なお、成分名、疾患・症状名の選出においては、日経BPの「闘う男の健康食品講座 時間をかけずに,必要な栄養成分を摂る!」というサイトを参考にした。このサイトは、サントリーの「取材協力」のもとで藤木理絵さんという記者が書いた記事広告である。成分の医薬品的な効能効果をあれこれ記述した上でサントリーの (医薬品等ではない) サプリメント商品を紹介し、記事の最後では販売サイトにリンクするという構成である。典型的なバイブル商法のネット版であり、薬事法に抵触していると考えている。(このサイトについて、これ以上の話はまた後日ということで。)

疾患・症状名で検索して広告リンクが表示された場合に絞って、テスト結果を表にしてまとめた。限られたキーワードを対象としており、広告リンクについても、(私の)見落としがあり得る上に時々刻々と広告主は変化するだろうことを踏まえて、ご覧頂きたい。

成分名
疾患・症状名
Google Yahoo! JAPAN
(Overture)
有無判定対象とした広告リンク
マカ 有り (多数有り) 有り (多数有り) ・サントリーのマカ
・サントリーのマカ冬虫夏草
不妊 有り (サントリーのみ) 無し
精力減退 有り (サントリーのみ) 無し
グルコサミン 有り (多数有り) 有り (多数有り) ・サントリーのグルコサミン
・辛い関節を何とかしたい方
(www.admate.jp)
・元気でアクティブな毎日を応援
(www.cgate.co.jp)
関節痛 有り (サントリー以外も有り、
「その他のスポンサー」に
サントリーが存在)
有り (サントリーは無し)
アントシアニン
(ブルーベリー)
有り (多数有り) 有り (多数有り) ・サントリーのブルーベリー
・ブルーベリーならサントリー
・サントリー 瞳の健康法
・目の疲れを感じたら!
(kokoro33.health-life.net)
・TVで紹介されました
(www.783793.com)
・甘酸っぱいおいしさで人気急上昇
(megu.vivian.jp)
・医者が選ぶサプリメントの通販
(www.ordersupli.com)
・パソコンなどよく使う方に
(www.ably.co.jp)
・朝日新聞で取り上げられた
(famima.foodpark.jp)
疲れ目 有り (サントリー以外も有り) 有り (サントリーは無し)
眼精疲労 有り (サントリー以外も有り) 有り (サントリーは無し)
ドライアイ 有り (サントリーは無し) 無し
肩こり 有り (サントリーは無し) 無し
DHA, EPA 有り (多数有り) 有り (多数有り) ・サントリーの「DHA&EPA」
血行不良 有り (サントリーのみ) 無し
甜茶 有り (多数有り) 有り (多数有り) ・話題の快適グッズはケンコーコム
(www.kenko.com)
花粉症 無し (ただし他の成分の
健康食品は有り)
有り (サントリーは無し)
ノコギリヤシ 有り (多数有り) 有り (多数有り) ・サントリーのノコギリヤシ
前立腺肥大症 有り (サントリーのみ) 無し
残尿感 有り (サントリーのみ) 無し
頻尿 有り (サントリーのみ) 無し
表: 成分名、疾患・症状名をキーワードとして Google、Yahoo! で検索した際の広告リンクの有無 (2月12日調査)
(注意) 疾患・症状に対する効能効果の真偽は考慮していない。

念のため、表に挙げた疾患・症状に対する効能効果が、各成分、各商品に本当にあるのかどうかは、ここでは考慮していない。医薬的な効能効果を標榜している時点で、真偽を問わず薬事法の規制の対象となる。薬事法以外の、たとえば健康増進法においては、虚偽・誇大かどうかが問われてくる。(そのうえでの参考として、国立研究・栄養研究所の「「健康食品」の安全性・有効性情報」によると、たとえばアントシアニンについては、「俗に、「視力回復によい」「動脈硬化や老化を防ぐ」「炎症を抑える」などといわれているが、ヒトでの有効性・安全性については、信頼できるデータが十分ではない。」としている。)

テスト結果を見る限り、どうやら、Yahoo! JAPAN (Overture) のほうが、薬事法関連の広告審査が厳しいように見える。

このことは、両者の規約等からも伺える。Overture においては、「掲載ガイドライン」という文書において、日本の薬事法による規制を明記している。

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、健康食品など
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器などの広告につきましては、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布することが法律により禁じられています。また、その効能効果について表現できる範囲が定められています。なお、公務所、学校、各種団体、医師などがこれらの医薬品などを指定、公認、推薦し、又は選用している旨などの広告も認められておりません。なお、健康食品、健康器具、美容器具、健康雑貨などについても、医薬的な効能効果を標榜した場合は、その規制対象となることがあります。所管官公庁が示す基準、考え方や具体的にどのような行為が違反とされているかについては、東京都福祉保険局健康安全室薬事監視課のホームページなどでご確認ください。
東京都福祉保険局健康安全室薬事監視課Webサイト
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/yakuji/kansi/cm/top.html
化粧品の効能効果の表現の範囲
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/yakuji/kansi/cm/cosme.pdf

(オーバーチュア株式会社 掲載ガイドライン(2006年12月)より引用)

一方、Google においては、「Google AdWords コンテンツ ポリシー」という文書において、かろうじて以下の一文が掲載されている。

妙薬
医薬品でないにもかかわらず効果効能を宣伝する広告は許可されません ("一晩でがんが治る" など)。

(Google AdWords: コンテンツ ポリシー (日本語に切り替え) より引用)

「妙薬」ってなんぞや? と思い、英語の原文を当たってみた。実は、「医薬品でないにもかかわらず効果効能を宣伝する広告」という表現は、日本の薬事法に沿った改訂であることが分かった。

Miracle Cures
Advertising is not permitted for the promotion of miracle cures, such as 'Cure cancer overnight!'

(Google AdWords: Content Policy (英語に切り替え) より引用)

「一晩でがんが治る」という例示がどうも極端だと思ったら、これはやはり「妙薬」の例示であった。Google なりの努力の跡は伺えるものの、いささか心もとない。

ただし、Google も日本の薬事法関連の広告審査をやっているそうだ (そりゃそうだ)。インターネット広告代理店の株式会社アイレップの記事「Google アドワーズの“審査”を再確認しよう」によると、登録キーワードと広告文の双方について、審査が行われているとのことである。検索連動型広告の Google AdWords では、まず、使用禁止キーワード (非公開) との自動照合を実施しているそうで、薬事法関連の使用禁止キーワードも用意されているとのことである。これに引っかかると、人間による事前審査に回されるそうである (引っかからなくても事後審査はある)。一方で、コンテンツ連動型広告の Google AdSense では、最初から人間による事前審査が行われるそうである。

一方、Overture では、検索連動型広告であっても、人間による事前審査が実施されているそうである。また、アイレップの別の記事「リスティング広告出稿における薬事法クリアのポイント」によると、少なくとも Overture の広告審査では、疾患・症状名のみならず、医薬的な効能効果を標榜する表現は実際に広告掲載お断りとなっているそうだ (Google でも、人間による審査は同様であろう)。

少なくとも、疾患・症状名をキーワードに登録することは、それだけで医薬品的な効能効果を標榜しているとみなされる。テスト結果では Yahoo! JAPAN (Overture) と比べて審査漏れの目立つ Google においても、成分名で検索した場合と比べて疾患・症状名で検索した場合の当該広告リンクは激減している。一定の審査あるいは自主規制が効いていることは十分に伺える。

とはいえ、いくつかの疾患・症状名で Google 検索してみると、サントリーの広告リンクの審査漏れは際だっている。他社が手を引いてしまうようなキーワードでも、サントリーだけが健康食品のリンク広告として表示されているという場合が Google では散見される。その理由として、そういう宣伝方針なのがサントリーのみであるという可能性のほかに、Google の審査をすり抜けやすい独自のノウハウやコネを持っているのかもしれない (あくまで想像だが)。

さて、本来こういうテストは、網羅的、定期的に実施するべきだろう。しかし、私一人ではとても手に負えそうもない (苦笑)。どこかの信頼できる公的機関がやってくれないだろうか?

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