コラム「Google検索で「携帯 開発」と入力すると・・・」を執筆、掲載した
勤め先(大和総研)のWebサイトに、『Google検索で「携帯 開発」と入力すると・・・』というコラムを執筆し、先週掲載した。興味のある方はどうぞ。
携帯アプリケーション開発の現場が相当厳しいというのはIT業界では知られた話だが、そこへさらにスマートフォンが現れ、もう大変だという主旨。Googleのサジェスト機能の話題と絡めて書いてみた。いやもう本当に、状況の好転を切に願っている(苦笑)。
勤め先(大和総研)のWebサイトに、『Google検索で「携帯 開発」と入力すると・・・』というコラムを執筆し、先週掲載した。興味のある方はどうぞ。
携帯アプリケーション開発の現場が相当厳しいというのはIT業界では知られた話だが、そこへさらにスマートフォンが現れ、もう大変だという主旨。Googleのサジェスト機能の話題と絡めて書いてみた。いやもう本当に、状況の好転を切に願っている(苦笑)。
先月(2009年12月)に、Android 携帯の HT-03A (台湾の HTC 製) を購入した。今のところ(開発用機器を除くと)日本で唯一の Android 携帯なのだが、本体価格は投げ売り状態で、池袋の量販店では0円か1円かという有様だった。また、昨年末から NTT ドコモが、スマートフォン向けのキャンペーンや新料金プランを相次いで実施している(特に「タイプシンプル バリュー」は店員が案内しない場合もあるので要チェック)。他に乗り換えるなどして全然使わなくなっても、不要なオプション、保険、さらにパケット定額対象のプロバイダ契約も止めれば、月々の支払いを800円以下に抑えられる。2年後の契約切れまで使い切らなくてもさほど負担にはならないと思い、購入に至った。いろんな機能を試したり、Android アプリケーション作成に挑戦してみたり、まあそれなりに楽しめるオモチャである。
そしてついつい、改定常用漢字表対応も試してしまった。
この結果は Android アプリケーションとしての出力だが、同様の文字列の Web ページをブラウザで表示させても同様だった。改定常用漢字表(試案)の中で、旧来の環境では特に問題が生じる字体「塡」「剝」「頰」「𠮟」のうち、やはり「𠮟」(くちへんに「七」)だけは表示されない、ということだ。
ただし、Android プラットフォームとしては Unicode の4バイト領域を処理できていて、Android 用の日本語フォントが「𠮟」(くちへんに「七」)に未対応なため、このような表示となっているのではないかと予想する。Android の C/C++ ではワイド文字型の wchar_t が4バイトなのだそうで、Google Groupのandroid-ndkでも驚きを伴う話題になっていたようだ。今後 Google はそれをサポートせず、代わりに ICU (International Components for Unicode) を使用するとのことである(日本Androidの会でのTetsuyuki Kobayashi さんの投稿より)。この ICU はもちろん Unicode の4バイト領域を処理できるコンポーネントである。
Android のフォントについて検索してみると、mashabow さんという方のブログ記事「16000字超の漢字と11000字超のハングルが入った軽量CJKフォント Droid Sans Fallback」を見つけた。Android 用のフォントは Ascender Corporation が開発、提供していて、この記事が書かれた2009年2月時点では Droid Sans Fallback (DroidSansFallback.ttf) というフォントで日本語がサポートされていた。しかしその漢字サポートの範囲は、"GB2312, Big 5, JIS 0208 and KSC 5601" (2007年11月の同社のプレスリリース "Ascender creates the new Droid font collection for Open Handset Alliance's Android platform" より) であって、中国語や韓国語も表示可能な一方で、JIS X 0213 は未対応ということになる。
そして、旧来の文字コード(JIS X 0208)と Unicode とのマッピングで問題となる漢字が先の4字(「塡」「剝」「頰」「𠮟」)なのだが、Unihan Database Lookup によると、「塡」は韓国語(KSC 5601、現在の KS X 1001)、「剝」「頰」は韓国語と繁体字中国語(Big 5)で対応しており、残るは結局「𠮟」(くちへんに「七」)ということになる。それゆえ先の写真で示したような状況となっていると推測する。
なお mashabow さんの記事では「もちろん、ひらがな・カタカナもちゃんと収録されているが、デザインが若干ぎこちない。おそらくは華康ゴシック体のかなと同じもの。また、漢字の筆画処理が大陸風なので、日本語の表示には難があるかもしれない。」としているが、現在では Droid Sans Japanese (DroidSansJapanese.ttf) という日本語向けフォントが用意されている。Android 開発環境(Android SDK)を確認してみると、Android 1.5 と 2.0 には含まれていないが、Android 1.6、2.0.1 と 2.1 には搭載されている。購入時は Android 1.5 を搭載している HT-03A でも日本語向けフォントぐらいは先行搭載していただろうし、購入後すぐに 1.6 (2009年10月配信開始)へのアップデートが起動するので、いずれにせよ現在では日本語風の書体を利用できる。今年相次いで発売される予定の Android 携帯は、おそらくその点については心配ないだろう。
とはいえ、つい数日前にリリースされた最新の Android 2.1 でも、DroidSansJapanese.ttf のファイルサイズ(1,173,140 バイト)に変化はない。Android SDK のエミュレータ (AVD) で先のアプリケーションをテストしても結果は変わらなかった。安岡孝一さんのブログ記事「【改定常用漢字表試案への意見】テンプレート」で列挙されている漢字に対象を拡大し、エミュレータ上でテストした結果は、下のような感じである。
他の携帯電話や Windows XP ともまた違う結果なのだが、要するに JIS X 0213 にはまだ対応していない。今月 Google が発売した Nexus One (Android 2.1 搭載)でもおそらく同様で、「𠮟」(くちへんに「七」)は表示できないだろう。ソニーエリクソン、シャープ、NEC 等、日本のメーカーが今年発売予定の Android 携帯は、果たしてどうだろうか?
勤め先(大和総研)のWebサイトに、「話題のスマートフォンを海外で使用したいのだが…」というコラムを執筆し、金曜日に掲載した。興味のある方はどうぞ。
AndroidスマートフォンのHT-03Aは、本当に買う寸前まで話が進んでいたのだけれども、恥ずかしながら、国際ローミングサービスがパケット定額制の適用外だということをすっかり失念していた。パケット通信で国際ローミングを使用しない(アクセスポイントの設定を定額制のままにしておく)ことも可能なのだが、それだったら普通の携帯電話機で十分ということになる。的確な助言をくれた店員さんにはこの場を借りて感謝したい。また気が向いたら、その店員さんに話しかけて購入しようと思う。
海外での使用はさておき、とにかく最近は2台目携帯としてのスマートフォンが欲しくて、うずうずしている(苦笑)。自分でもアプリケーションを開発して遊びたいならAndroidなのだが、来年発売されるシャープやソニー・エリクソンなどのAndroidスマートフォンは、その高スペックゆえにかなり高価なのではと懸念している。ウィルコムが出してくるSIMロックフリーのスマートフォンも魅力的だし、時々iPhoneもいいなと思うことがあるし、しばらくあれこれ思案する日々が続きそうだ。
勤め先(大和総研)のWebサイトに、『「婚姻届がオンライン戸籍手続で可能に!」のその後』というコラムを執筆し、先週掲載した。興味のある方はどうぞ。
婚姻の届け出方法を私的に調べているうちに、「そういえばあの話はどうなったんだろう?」と思い出したのがきっかけ。まあ、予想通りであった。
調べ物の副産物も結構あった。過去の法務省の資料を当たってみると、やはりここでも文字コードの問題が強く認識されていることが分かる。「戸籍統一文字」という、あまり関わりたくない(苦笑)文字コードがそこには存在している。また、先月発表された「オンライン利用拡大行動計画」では、公的個人認証サービスのクライアントソフトおいて Java (JRE) を不要とする方針であることも知った。やはり、一般の国民に提供するソフトウェアとしては、マイクロソフトの諸製品と比べても Java は未熟すぎた。
いろいろ書きたいことはあるのだが、(例によって?)それらはまたの機会ということで。
勤め先(大和総研)のWebサイトに、『ITの世界に「トリアージ」は有り得ない』(分社化に伴い10月にURL変更)というコラムを執筆し、先月末に掲載した。興味のある方はどうぞ。
「トリアージ」という言葉を私が知ったのは、NHKスペシャル「トリアージ 救命の優先順位」(初回放送2007年4月)という番組だった。初回放送時にも観たし、今年4月の再放送時にも観た。その番組では、107名もの死者を出したJR福知山線脱線事故にて実施されたトリアージを題材としていた。そうした本来のトリアージの重さと比べて、IT業界の一部で呼称している「トリアージ」は一体何なのかと疑問に思ったことが、コラム執筆の出発点であった。
IT業界内で私と同じようなことを思っている人はいないのかなと検索してみたら、M.I.R.A.I. MUGEN というベンチャー企業の田中令子さんのブログ記事を見つけた。
もう一つ、トリアージという言葉をIT業務で使いたくない理由。
私が普段使う「トリアージ」の意味にあります。
被災者のケガの具合で4段階に色分けされたカードを医師の判断で
次々と付けていきます。救護者は、そのカードに応じて手当てを行います。
↓Wikipedia の解説
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B8
災害ボランティアの私としては、、、切ない。
ITの業務では「優先順位」にしときます。頑固者なので。
(田中令子. 「ITの世界のトリアージって?」. システム屋日誌. 2007年1月16日.)
こういう時にこういう方を見つけると、素直に嬉しいものだ。私も、ITの業務では「優先順位」にしときます。頑固者なので。
ついでに、当のコラムでは明示しなかったが、いろいろ閲覧した中で特に許容し難かった事例をここに引用する。
コタツモデルで行うこと,それは,ビジネス戦略,ビジネス・オペレーション,要求の関係を見える化することです。そして取捨選択することが重要となります。ここでは,この取捨選択のことをトリアージ*1といいましょう。
*1 トリアージ(triage)は,要求を戦略的に取捨選択すること。もともとは医学用語で,有限のリソース(医師や医薬品など)を最大限に活用し,各患者の病状や状況に合わせて,より多くの傷病者の治療をするために優先順位を決定することを指す。
トリアージとは,焼き鳥のことではありません。ビジネス戦略を見える化し,その戦略の中から,ここ数年最も重要な戦略を選択することです。ビジネス戦略を見える化して,トリアージ可能にすることが重要です。
(萩本順三. 「ビジネス価値を高めるためのビジネス戦略トリアージと要求」. 要求開発アライアンスのビジネス・モデリング道場. 日経ITpro. 2007年2月15日.)
「トリアージ」と言ってみたかっただけちゃうんか? というか、言ってみたかっただけですと公言している事例である。さらには「焼き鳥のことではありません」だって? あきれてものが言えない。
他にもコラムについて補足したいことはいろいろあるけれど、それはまたの機会ということで。
ココログフリーではいつの間にか、GoogleやYahoo!などの検索結果からアクセスすると、冒頭の記事タイトルの直下にも自動挿入広告(Sponsored Link)が表示されるようになっていた。これにひとまず対応すべく、記事タイトルと広告の間にも注意書きを自動挿入するようにスクリプトを変更した。なお、他にもココログフリーには私にとって不都合な点が発生したため、他のブログサービスへの移転を検討中である(後述)。
そもそものスクリプトを作成した経緯は、「ココログフリーの自動挿入広告 (Google AdSense) の下に注意書きを自動挿入するスクリプト」を参照されたい。かいつまんで話すと、ココログフリーの自動挿入広告は、Google AdSense(グーグル アドセンス)と呼ばれる仕組みを導入しており、それを改変、削除することは、ココログ(フリー)利用規約によって禁止されている。しかしながら、関連法規に反するような劣悪な広告がしばしば表示されてしまい、ココログ(ニフティ)もGoogleもそうした広告の削除要請に応じてくれないという実態がある。そこで、利用者にできるとりあえずの対策として、注意書きを自動挿入するスクリプトを作成した、という次第である。この時点では、最初の記事の末尾にのみ広告が挿入されていた(だからまあいいかとも思える水準だった)。
ところが最近になって、記事の末尾だけでなく、GoogleやYahoo!などの検索サービスからアクセスすると、冒頭の記事タイトルの直下にも自動挿入広告が表示されるようになっていた。takoさんという方のブログ記事「*second message*: ココログ:フリー版の広告(Sponsored Link)表示がいつの間にか増えている件」を読んで知った。どうやら遅くとも今年1月にはそうした変更が施されていたようで、利用者には何の通知もなかった。ブログ作者は一般に、検索サービスではなくブックマークやブログ管理画面などから自身のブログにアクセスするだろうから、ずっと知らないままの人も多いと思う。
繰り返すが、ココログ(ニフティ)からは何の通知もなかった。だから私も知らなかった。試しに「小川創生」でGoogle検索した結果からこのブログにアクセスして、事実確認した。
こうした事態に対して、とりあえずの対策を再び施すことにした。手法はこれまでと基本的には同じで、ココログのメモリスト機能を使って、以下のようなスクリプト (JavaScript) を右側のサイドバーに埋め込んだ (画面には表示されない)。
<script type="text/javascript">
<!--
var message = '<div style="border: 1px solid gray;"><span style="font-weight:bold;">(ブログ作者からのご注意)</span><br><span style="color:black;">このブログに表示されている広告 (Sponsored Link) は、ブログ作者の意思に関わらず自動的に挿入されています。ブログサービス (ココログフリー) の利用契約上、ブログ作者は、サービスを無料で利用できる代わりに、これらの広告を改変、削除できません。関連法規やモラルを順守していない広告が表示されている可能性がありますので、ご注意ください。</span></div>';
function getFirstElementByClass(searchClass, rootElement, tagName) {
if (searchClass == null) {
return;
}
if (rootElement == null) {
rootElement = document;
}
if (tagName == null) {
tagName = "*";
}
var allElements = rootElement.getElementsByTagName(tagName);
var returnElement = null;
for (i = 0; i < allElements.length; i++) {
if (allElements[i].className == searchClass) {
returnElement = allElements[i];
break;
}
}
return returnElement;
}
function addMessage(element, message, valign) {
if (element == null || message == null) {
return;
}
if (valign == "top") {
element.innerHTML = message + element.innerHTML;
} else {
element.innerHTML = element.innerHTML + message;
}
}
function onLoadListener(e) {
if (document.referrer) {
var refSplit = document.referrer.split('?');
if (AAFS.prototype.engines[refSplit[0]]) {
addMessage(getFirstElementByClass("entry-body-top", document, "div"), message);
}
}
addMessage(getFirstElementByClass("entry-body-bottom", document, "div"), message);
}
if (window.addEventListener) {
window.addEventListener("load", onLoadListener, false);
} else if (window.attachEvent) {
window.attachEvent("onload", onLoadListener);
}
// -->
</script>
具体的な変更点は、リンク元(document.referrer)のURLに検索サービスの文字列が含まれている場合に、冒頭の記事タイトルの下に注意書きを挿入するようにしたところである。その判定には、ココログ側のスクリプトの変数(AAFS.prototype.engines)を参照した。その他、注意書きの外枠や色などを若干変更した。
さて、ココログフリーについては、つい先日、1年以上更新しないブログは削除するとの通知があった。1年くらい間隔が開いてしまうことは普通にあり得る。単なるサボりだけではなく、病気、事故、仕事上の都合、その他いくらでも理由は考えられる(私にもあり得る)。そして、ブログ作者の死後もしかり。私なんかよりもずっと質・量の充実したブログでも、1年更新しなかったら削除されるようだ。
自動挿入広告の件といい、1年で削除といい、目先の収入拡大や管理コスト削減に汲々(きゅうきゅう)としているのだろうか。通知もなく(しばしば関連法規に反するような)広告を記事タイトル直下に追加したり、後出しで削除規定を持ち出したり。我慢の限界を超えてしまったので、有料でもいいから他のブログサービスへの移転を検討しているところである。
最近、グリーンITという言葉がIT業界で注目され始めている。コンピュータシステムにおける電力消費が地球温暖化防止の観点から無視できないほど増加しているとされており、それを削減する努力が求められようとしている。ただし今のところは、商売上の明確なメリットがありそうなところはともかく、そうでないところはコストの問題もあって簡単には対応できないだろう。どのような対策がどの程度必要なのか、効果はあるのかといった検討や議論も含めて、とにかく啓蒙が始まったというところである。
詳しく知りたい人は、Googleで「グリーンIT」を検索してもトップに表示される日経ITProの「グリーンIT」をおすすめ・・・と言いたいところだが、そのトップページ上部に、なんとも悩ましいIntel(インテル)のバナー広告が表示される場合がある。(もしも表示されなければ何回かリロードするとそのうち現れる)
(日経ITPro「グリーンIT」を2008年1月2日閲覧、縮小して抜粋)
この広告はFlashのアニメーションである。3年ほど前に購入したノートPCのスペック(Windows XP SP2、Intel Celeron 2.7GHz、メモリ768MBへ増設)では不足しているのだろうか、アニメーションの一部(ジグソーパズルみたいな図形が高速で動く場面)がコマ送り状態となる。ページを表示したままにしていると、同じアニメーションがずっと繰り返される。そして、ただ表示しているだけで、冷却ファンの音が表示前よりもにぎやかになる。
WindowsのタスクマネージャでCPU使用率を確認してみた。バナー広告のアニメーションの繰り返しを、バナーを全部表示した状態で3周、次に、上半分をページ外にスクロールして下半分だけ表示した状態で2周させ、その後、バナー全部を非表示状態にした。(ページスクロールや他アプリケーションなどのCPU使用率への影響も多少ある。)普段使っているFirefoxだけでなく、Internet Explorer 6でも同様にテストしてみた。
(Firefox 2 で当該バナー広告を表示した際のCPU使用率(全部表示3周、下半分表示2周))
(Internet Explorer 6 で当該バナー広告を表示した際のCPU使用率(全部表示3周、下半分表示2周))
どちらのブラウザにおいても、ピーク時のCPU使用率は85%以上が表示された。おそらく瞬間的には100%に振り切れているではないかと思う。ほんの3年前のIntel Celeron搭載ノートPCを捨てて最新のIntel Core 2搭載PCを買えという、Intelからのメッセージなのかもしれない。なかなかよくできた広告だ(苦笑)。
ブラウザの比較でいうと、IEよりもFirefoxのほうがCPU使用率が高くなっている。実際、ピーク時のアニメーションのコマ送り状態もFirefoxのほうが顕著で、グラフを横軸方向に比較すると、Firefoxのほうが波形の周期が長くなっている。また、最大のピーク時以外にも、Firefoxでは、CPU使用率30%程度の2番目のピークが有意に存在する。
Firefoxについては、CPUやメモリなどの資源を(IEよりも)多く使用しているという報告が様々なサイトでなされている。Firefox側もその点は認識しているようで、たとえばFirefoxサポートページの「CPU usage」(英語)に対策方法が述べられている。同様の内容を日本語でまとめたブログ記事「Amigomr の徒然日記 : Firefox の高 CPU 使用を防ぐ方法」もある(このAmigomrさんという方はMozilla Japanで翻訳を担当なさっているらしい)。
なお、どちらのブラウザも、半分表示の状態ではCPU使用率が有意に低下し、非表示状態ではほとんど0%となった。この点について、産業技術総合研究所の高木浩光さんのブログ記事「高木浩光@自宅の日記 - 環境負荷の高いIBM広告」を見つけた。(2005年の時点ですでに当該の問題に気づいてブログ記事にしておられる。さすがだ。)この記事の事例では非表示状態でもFlashバナー広告がCPUを使用し続けているとしているが、今回の私のテスト結果は異なっていた。その記事にトラックバックしているブログ記事「こがねむしblog - 環境負荷の高いIBM広告」でも異なる結果(私と同じ結果)だったようだ。(PC環境やFlashアニメーションなどの条件によって、そのあたりの挙動は違ってくるのかもしれない。)
ということで、閲覧しないWebページは放置せずに閉じるか、ページスクロールしたり他のウィンドウやタブを前面に表示したりしてFlashアニメーション広告を隠すといったグリーンIT対策が今後ユーザに求められるかもしれない・・・って違うだろ(笑)。
そもそも、「インテルの世界最高水準の電力消費低減テクノロジー」「インテルはグリーンITをこれからも牽引します」といった調子でグリーンITを啓蒙する広告が、そんな電力浪費Flashアニメーションをむやみに使用してしまっては言行不一致である。日経BP「グリーンIT」のサイト管理者にそうした意識があれば素晴らしいが、広告収入を得る立場ではまあ無理だろう。広告主のインテルにこそ、もっと高い意識を持って欲しいところだ。Intel Core 2の性能が適切に活かされる出番は他にいくらでもあるだろう。
著作権について最近、著作権を侵害している違法サイトからのダウンロード行為を、私的使用のための複製 (著作権法第30条) の適用除外とする (違法とする) ことについて、様々な議論が展開されている。
その震源地である、文化庁の文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の中間整理では、「第30条の適用を除外することが適当であるとする意見が大勢であった」と総括されている。そして、その中間整理について、先月から文化庁がパブリックコメント (意見公募手続) を実施している。パブコメ提出の締切は4日後 (2007年11月15日) である。
思うところがあって、以下のような短いパブコメを個人として提出してみた。
(1.~4. は、個人/団体の別、氏名、住所、連絡先を記載)
5. 該当ページおよび項目名:
104ページの「違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画」について6. 意見:
ダウンロードの違法化は、権利者による損害賠償の二重取りを可能にしてしまう問題がある。現状でも、公衆送信した者に対しては、送受信の数量と著作物の販売額に応じた損害賠償請求が可能である(著作権法114条1項)。もしもダウンロードも違法化すれば、個々のダウンロードした者に対しても、著作物の販売額以上の損害賠償請求が可能となる(114条3項、4項)。権利行使の困難さについての議論以前の問題として、そもそもこのような立法は権利の過保護ではないか。
なお、ファイルローグ事件判決の記事 (Internet Watch) をあらためて確認すると、「販売額」は「使用料」としたほうが正確だったかもしれない (意見の主旨には影響しないが)。
以下、パブコメしてみた背景などについて述べる。
先の小委員会の中間整理においては、ダウンロード違法化は「情を知って」(違法録音録画物や違法サイトと承知の上で) 行う場合に限定されており、また、刑事罰は設けないとされている。利用者保護の観点からそうしているとのことである。
そうだとしてもダウンロード違法化には反対だという声がネット上では目立つ。しかし、先の小委員会では、IT・音楽ジャーナリストの津田大介さんが一人だけ反対論を唱えていた。中間整理には (少数意見として)、「違法対策としては、海賊版の作成や著作物等の送信可能化又は自動公衆送信の違法性を追求すれば十分であり、適法・違法の区別も難しい多様な情報が流通しているインターネットの状況を考えれば、ダウンロードまで違法とするのは行き過ぎであり、インターネット利用を萎縮させる懸念もあるなど、利用者保護の観点から反対だという意見があった。」と記載されている。また、ITMedia の記事「津田大介さんに聞く(前編):「ダウンロード違法化」のなぜ ユーザーへの影響は」「津田大介さんに聞く(後編):「ダウンロード違法」の動き、反対の声を届けるには」では、主張の詳細説明と同時に、パブリックコメントの重要性を津田さんは呼びかけていた。
こうした議論をきっかけに、ネット利用者の意見を集約して提言するための任意団体として、MIAU (Movements for Internet Active Users: インターネット先進ユーザーの会) が津田さんらを中心メンバーとして先月に設立されていた。そのMIAU によるパブコメ最終案に、おおよそ反対論は集約されている。MIAU はパブコメの概要を自動的に作成するプログラムまで公開しており、一般のネット利用者にもパブコメの提出を呼びかけている。
なので、反対論が出尽くしているようならば、いまさら無名の私ごときが何かを言うまでもないと思っていた。パブコメの自動作成プログラムなんぞ、同じ意見の焼き増しに過ぎず、多数決的な局面では意味があるかもしれないが、私は使う気になれない。だいたい、パブコメなんて今まで一度も出したことがない。今のところは MIAU とかに参加するつもりもない (興味はゼロではないが様子見、といったところ)。
ただし、その MIAU のパブコメ最終案を含め、ネット上の意見をいろいろ検索、閲覧してみても、損害賠償の二重取りの問題についてはほとんど誰も言及していない。スラッシュドットジャパンにおける IZUMI162i6 さんという方の書き込みを辛うじて見つけたくらいである。
著作権法第114条 (損害の額の推定等)には、すでに第1項で、違法な公衆送信におけるダウンロードの数量を元にした損害額の推定方法が規定されている。違法サイトの運営者等に損害賠償請求する際には、そうした推定が適用可能である。そのうえさらに、個々のダウンロードした者にも損害賠償請求を可能にするのは、権利の過保護ではないか。
懲罰的損害賠償として考えるなら、二重取りは問題ではないかもしれない。しかし、日本の法体系では、本来の損害額を超える損害賠償請求は認めないことになっている (はず)。文化審議会著作権分科会の別の小委員会 (司法救済制度小委員会) でも、懲罰的損害賠償について議論はしたが見送った模様である。
現状ではダウンロードした者の特定や「情を知って」の立証が難しいという主張もあるだろう。そうした主張は、「だから無益だ」という導出とともに、反対論からも聞こえてくる。しかし、将来にわたってずっとそうであるとも限らない。立法として、そうした権利行使の困難性を前提として二重取りの余地を残してしまうのはおかしいと思う。
・・・というようなことを、ほとんど誰も言及していない。私の考えがズレているのだろうか?正直言って、素人の私には分からない。でも、とりあえず言ってみることにした。そういう次第である。
勤め先(大和総研)のWebサイトに、「金融商品取引法がWebデザインに問いかけるもの」というコラムを執筆し、昨日掲載した。所属する部署(情報技術研究所)のコラムページが今月から立ち上がっていて、その第3回にあたる。興味のある方はどうぞ。
このコラムについては、ここで補足したいことがいろいろある。特に、野村證券グループのネット広告については、いろいろ言いたいことがある・・・が、しばらく自粛しておく。
ついでに、大和総研の従来のコラムページに掲載されている過去のコラムも以下リストアップしておく。よろしければどうぞ。
難治性うつ病などの治療に使われる一方で依存症の危険が指摘されている向精神薬の塩酸メチルフェニデート (商品名「リタリン」) を不適切に大量処方していた「東京クリニック (東京都新宿区)」。そのクリニックに東京都と新宿区保健所が立ち入り検査したとか、製薬会社が効能・効果の記載からうつ病の削除を検討しているとか、そんなニュースがここ数日伝えられた。
この東京クリニックというところは、ネット上のその筋では有名だったらしい。Google や Yahoo! JAPAN でも大々的な宣伝を展開しており、「リタリン」で検索すると、現在でもトップに広告が表示される。その広告を見て薬欲しさに来院する依存症患者も多数いただろう。
(Google にて「リタリン」で検索した結果を2007年9月22日抜粋)
(Yahoo! JAPAN にて「リタリン」で検索した結果を2007年9月22日抜粋)
いちいち「正しい診断・治療・薬の処方」と言い張っているところが象徴的でもある。
そもそも、薬品名をキーワードにして医療機関がネット広告を打つというのは、薬の処方自体をウリにしているわけで、診断・治療が主であるはずの医療機関として不適切ではないか。まっとうな医療機関ならば、病名の「うつ病」をキーワード指定するだろう。薬局が薬を宣伝するのとは訳が違う。
東京クリニック自身によって広告投稿が取り下げられることを期待する。あるいは、遅くとも行政指導が下るなどの明確な理由が発生した際には、不適切広告として Google や Yahoo! JAPAN (その子会社のオーバーチュア(Overture)) が削除することを期待する。いつどのように広告を再審査するのかは難しい問題だとは思うが。
さて、今回の件を伝える Web 上のニュースをいくつか見ているうちに、コンテンツ連動型広告の Google AdSense (アドセンス) を導入している新聞社や通信社の記事にも東京クリニックの広告が堂々と表示されているのを見つけた。
(時事通信「時事ドットコム:リタリン不適切処方で立ち入り=新宿のクリニックに-東京都」(2007年9月18日)を2007年9月22日抜粋)
東京クリニックといい、その下の「うつ病でもできちゃった」といい、実に嘆かわしい。Google はもとより、ネットについて批判的な言説の多い旧来のメディアも、読者の注意を喚起することなく、こうしたいかがわしい広告のクリック数に応じた収入を得ていることになる。
他の新聞社 Web サイトの記事でも東京クリニックの広告は表示されており、たとえば、朝日新聞 (asahi.com) の記事、読売新聞 (YOMIURI ONLINE) の記事 でも確認できた。
そして、産経新聞 (Sankei WEB) で見かけた記事では、これまたひときわ興味深い状態となっている。
(産経新聞「「うつ病」効能の削除検討 リタリン乱用で製造会社|科学|カルチャー|Sankei WEB」(2007年9月21日)を2007年9月22日抜粋)
きっと、何らかの判断があって「東京クリニック」という名前は記さず、「東京都新宿区の診療所」と表記したはずである。それが、その直下の広告によって台無しになっている。
なお、日本経済新聞 (NIKKEI NET) の関連記事の場合、Google AdSense の対象となる記事の分野が「スポーツ」「新製品」「リリース」などに限定されているため、当該広告は表示されていない。批判の対象としているはずのいかがわしい業者の広告が自動表示されてしまう危険を考えれば、せめて一般のニュース記事は Google AdSense の対象外としておくべきだろう。(ただし、日経の「新製品」「リリース」では、新製品発表やプレスリリースに合わせた広告リンクが無チェック状態で表示されてしまう危険があるため、その点については、読者にとっては他紙よりも注意が必要である。)
自身が広告媒体であるはずの新聞社の Web サイトが Google AdSense を導入することの問題点は、以前の記事「Google AdSense を導入する新聞社の免責主張は無責任な二枚舌」にも書いた。収益におけるそうした広告への依存度が高まれば、それこそ、批判を含む表現の自由の阻害要因になりかねない。やはり、報道機関は Google AdSense のような他社のコンテンツ連動型広告システムの是非を再考すべきである。
なお、このブログ (ココログフリー) にも Google AdSense は導入されており、この記事の内容に連動して東京クリニックの広告がこの下に表示されてしまうかもしれない。あらためて、東京クリニック、ココログ (ニフティ)、Google のいずれかによって広告が削除されることを期待する。そして、これほど問題視されている広告主の広告がいつまでも削除されないようなら、やはり他のブログサービスへの移転を考えるべきだと思わざるを得ない。
先月の記事では、このブログ (ココログフリー) の記事末尾に表示されるコンテンツ連動型広告 (Google AdSense) における虚偽・誇張の広告について、ニフティ、Google に問い合わせたが相次いでたらい回しされ、行政当局 (大阪府健康福祉部薬務課) に問い合わせたものの今のところ削除されていないという経緯を書いた。
そもそも、広告について、広告媒体 (テレビ、新聞や Web サイトなど) にはどのような責任があるとされているのか、Google AdSense についての最初の記事を書いて以来、ずっと気になっていた。調べてみたら、1989年 (平成元年) の最高裁判例があることを、主に以下の二つの文献から知った。
「日本コーポ分譲マンション事件」あるいは「日本コーポ広告事件」と呼ばれる当該の事件では、原告はマンション販売の新聞広告を見て日本コーポと購入契約を結んだが、その後日本コーポが倒産してしまい、マンションの引き渡しも内金の返金も受けられなかった。そうした被害を受けた原告が新聞社に損害賠償を請求したという裁判である。平成元年9月19日最高裁判決では、要点を抜粋すると以下のようなことが述べられている。(一文だけの引用なのだが長すぎるので改行を加えた。)
すなわち、元来新聞広告は取引について一つの情報を提供するものにすぎず、読者らが広告を見たことと当該広告に係る取引をすることとの間には必然的な関係があるということはできず、とりわけこのことは不動産の購買勧誘広告について顕著であって、広告掲載に当たり、広告内容の真実性をあらかじめ十分に調査確認した上でなければ、新聞紙上にその掲載をしてはならないとする一般的な法的義務が新聞社等にあるということはできないが、
他方、新聞広告は、新聞紙上への掲載行為によって初めて実現されるものであり、広告に対する読者らの信頼は、高い情報収集能力を有する当該新聞社の報道記事に対する信頼とまったく無関係に存在するものではなく、広告媒体業務にも携わる新聞社並びに同社に広告の仲介・取り次ぎをする広告社としては、新聞広告のもつ影響力の大きさに照らし、広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があって読者らに不測の損害を及ぼすおそれがあることを予見し、または予見しえた場合には、真実性の調査確認をして、虚偽広告を読者らに提供してはならない義務があり、その限りにおいて新聞広告に対する読者らの信頼を保護する必要があると解すべきところ、
事実関係によれば、本件掲載等をした当時、被上告人らにおいて真実性の調査確認義務があるのにこれを怠って掲載等をしたものとはいえない。(「日本コーポ広告事件」平成元年9月19日最高裁判決文を、疋田聰. "新聞広告における媒体責任について". 東洋大学 経営論集. Vol.51, 2000, 319-328. より2次引用、改行・強調は引用者による)
要は、新聞社等に広告掲載についての一般的な法的義務はなく、裁判所で媒体責任が認められるには何らかの特別な事情が必要らしい。特別な事情というのは、判決文にもあるように、広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別な事情であって、さらに、虚偽・誇張の広告による読者の損害を予見しえた場合に法的義務があるということになる。また、先に挙げた弁護士の山元裕子さんの文献では、記事か広告か一見区別がつかない場合、媒体側が積極的に推奨している場合や、媒体が販売に関与している場合などでは媒体責任が認められる可能性があるとしている。このほか、タウン情報誌の広告に掲載した電話番号が間違えていたために間違い電話が第三者に多数かかってきた事件などでは、出版社の責任が裁判で認められたそうだ。
新聞社側は、新聞広告における媒体責任について、たとえば健康増進法のガイドライン案に対する厚生労働省への意見書の中で、以下のように述べている。
改正健康増進法第32条の2により、「何人」にも虚偽誇大広告等を禁じていることを理由に、ガイドライン案は、「広告等を依頼した食品等の製造業者又は販売業者」と並べて、無条件で、当該広告等を掲載した新聞社に媒体責任を課している。これは明らかに、広告掲載についての媒体責任に関する諸判例、すなわち「広告の責任は広告主にある」との社会通念上も、また法的にも確定している原則に照らし、不適当であり削除すべきである。ことさら媒体責任に言及することにより、広告表現に対する過剰な規制が行われ、自由な広告表現が阻害されるおそれがある。
(中略)
新聞各社は、広告の責任は広告主にある、との原則に立ちながら、読者保護の観点から広告の審査業務を行っており、また広告の浄化を目的に新聞広告審査協会を設立して、広告の事前、事後調査、一般読者からの苦情相談などの体制を整えてきた。さらに新聞界は日本広告審査機構 (JARO)の設立に積極的に関わり、同機構は消費者からの広告に関する苦情、意見に対応している。ガイドライン案は、こうした関係業界の自主規制努力を顧みず、広告主企業である製造業者等と媒体を同列にとらえ、虚偽誇大広告の掲載責任を媒体に問うていることは、極めて問題であり、媒体責任に言及した個所は削除すべきである。
(社団法人日本新聞協会. "改正健康増進法のガイドライン案等に関する日本新聞協会広告委員会の意見". 2003年7月23日.)
社会通念上も法的にも、原則として広告掲載についての媒体責任はない、にもかかわらず任意で広告審査などの自主規制努力を払っているのだから、媒体責任を課すのはなおさら問題だ、そのように新聞社は主張している。
しかし、そうした新聞社側の主張を踏まえつつも、現在の当該ガイドラインは以下のようになっている。
1 広告依頼者の第一義的責任
広告の掲載を依頼し、販売促進その他の利益を享受することとなる当該食品製造業者又は販売業者(以下「広告依頼者」という。)が、法第32条の2の規制の適用の対象者となるのは当然である。2 同条と広告媒体との関係
これに対し、広告依頼者から依頼を受けて、当該「広告その他の表示」を掲載する新聞、雑誌、テレビ、出版等の業務に携わる者は、依頼を受けて広告依頼者の責任により作成された「広告その他の表示」を掲載、放送等することから、直ちに同条の適用の対象者となるものではない。
しかしながら、当該「広告その他の表示」の内容が虚偽誇大なものであることを予見し、又は容易に予見し得た場合等特別な事情がある場合においては、広告依頼者とともに同条の適用があり得る。
ああ、なるほど、これは先述した「日本コーポ広告事件」最高裁判決を踏まえてアレンジした記述なのだ、と合点がいく。社会通念上も法的にも、これが妥当であろう。製造・販売業者と同列に媒体責任を課していたとされる当初の厚生労働省のガイドライン案も、媒体責任の記述を削除せよとする新聞社側の主張も、どちらも妥当性を欠くものである。そして、「諸判例」を根拠として挙げている新聞社に対しては、判例の一面的なつまみ食いをしていると言わざるを得ない。
さて、ここまで調べ考えてみると、新聞の Web サイトに Google AdSense を導入することの不自然さに気づく。ほかでもない、新聞自体が広告媒体であるはずだからだ。ブログなどの一般の Web サイトとは、その導入の意味するところは根本的に異なるはずである。
しかし、発行部数6位までの新聞の Web サイトを確認してみると、YOMIURI ONLINE (読売新聞)、asahi.com (朝日新聞)、NIKKEI NET (日本経済新聞)、Sankei WEB (産経新聞) の4社が Google AdSense を導入している。なお、MSN毎日インタラクティブ (毎日新聞) は MSN (Microsoft) の広告システムを導入している。自前ですべての広告を審査、管理していそうなのは、CHUNICHI Web (中日新聞) だけである。
Google AdSense を導入している4社のうち、読売、朝日、日経の3社は、Google AdSense の上部に小さく表示される「Ads by Google」という文字をクリックすると開くウィンドウにおいて、新聞社の免責を以下のように主張している。
この広告はGoogleによって提供される、コンテンツに連動した広告システムAdSense(アドセンス)です。
これらの広告は、あらかじめ広告主が指定したキーワードを元にサイトの内容に対して関連のある広告を自動的に配信するものです。表示結果の内容は Googleの広告掲載基準や条件を満たしたものですが、一切の責任は広告主及びリンク先ウェブサイトの運営者にあります。読売新聞社は、その内容に一切 の責任を負いません。
これらのGoogleの広告についてのお問い合わせ及び詳細はwww.google.co.jp/ads/をご覧下さい。
(YOMIURI ONLINE (読売新聞) にて「Ads by Google」をクリックすると開くウィンドウ より引用)
上記は読売の文面を引用したが、朝日の文面も日経の文面も同様である。なお、産経の場合は、Google AdSense に固有の注意書きはなく、サイト全体の利用規約にて広告一般の免責条項が記されているのみである。産経よりは他の3社のほうが少しはマシかもしれないが、そもそも「Ads by Google」をクリックすると免責条項が現れることを、それこそ読者は「容易に予見し得」ない。結局、みんな同類である。
このように、新聞社は、一方で自主規制努力をアピールして広告表現の自由を維持しようとしておきながら、Google AdSense を導入して「Googleの広告掲載基準」に丸投げし、広告料を稼いでいる。「読者保護の観点から広告の審査業務を行っており」などと言ってなかったっけ?二枚舌ではないか?
そもそも、「一切の責任を負いません」というのも不当ではないか?少々ブログ検索してみると、同様の疑問を呈している記事を、少ないながらも一つ見つけた。関西大学社会学部教授の水野由多加さんのブログ記事 So-net blog:千里一隅(旧・千里山一里):Ads by Googleのメディアビジネス がそれである。
一義的には、朝日新聞社に大きな問題がある。なぜならば「その広告を見る人はAsahi.comの広告を見ている」のであり、「記事に連動した内容の広告 が自動的に露出するから」、その受け手の意識の流れの利用について朝日新聞社が免責とは考えにくい。さらに朝日新聞社は、この広告掲出について(当然なが ら)広告対価を「受け取っている」のである。広告費の支払は受け取って、一切それが原因となるようなトラブルには免責とは、どのような論理なのだろうか。
しかし、ことはAds by Googleである。Ads by GoogleはAsahi.comに「上記のような取引を持ちかけた」のである。契約のもう一方の当事者としての倫理はどう考えるべきか。
当の Google は、設立への実績を新聞社が強調する日本広告審査機構 (JARO) には入会していない。広告の苦情に対する Google の姿勢を示す事例として、虚偽・誇張の広告について Google に問い合わせた際の定型文返信メールを、先月の記事に引き続き、ここに再掲する。
小川創生様
Google アドワーズ広告の広告主によるサービスの不具合に関し、ご連絡いただきありがとうございます。
アドワーズ広告プログラムでは、企業が自社のサービスの広告を掲載する場を提供しております。
弊社では顧客サービスを重視しており、広告主様にはユーザーに対する質の高いケアを期待しております。
しかしながら、弊社においてすべての企業の活動を監視できるわけではなく、またそのような責任も負っておりません。
お客様からのご連絡を受けまして、弊社ではこの広告主のアカウントを確認し不適切な点があるかどうかを調査いたします。
お客様におかれましてはその企業が所在している都市の公的機関等と連絡を取り、調査を依頼していただきますようお願い致します。
Google AdWords Team
本来は新聞社が広告を審査して掲載するはず (べき) で、読者も普通はそう認識している。なぜそれを、Google に丸投げするのだろうか。それは、「広告に対する読者らの信頼は、高い情報収集能力を有する当該新聞社の報道記事に対する信頼とまったく無関係に存在するものではなく」と認めてくれた最高裁判決と読者に対する裏切りであろう。
言うまでもないが、Google には、そのような読者 (利用者) の信頼はない。この論点において、Google は格付けの低いジャンクに過ぎない。
新聞社は、Google AdSense の導入をやめるか、さもなくば、広告審査等の自主規制努力を払っている (だから広告表現の自由を阻害するな) などという従来の主張をやめるべきである。どちらかしかないはずである。後者を選ぶならば、新聞社の信頼はそこいらの Web サイトと同レベルだということになる。
以前の記事「薬事法・健康増進法逃れに利用される Google AdSense」にも書いたように、このブログサービス (ココログフリー) の記事の末尾には、Google AdSense と呼ばれる仕組みによって、自動的に広告が挿入されている。
その広告を改変、削除することは、ココログ(フリー)利用規約によって禁止されている。もちろん、その広告収入によってココログ (ニフティ) はココログフリーを無料で提供しているのだし、利用規約を承諾した上で利用しているのだから、広告の挿入自体に文句を言うわけにはいかない。
しかし、たとえば、冒頭に挙げた記事には以下のような広告が挿入されている。
(「薬事法・健康増進法逃れに利用される Google AdSense」末尾の広告を5月24日抜粋)
まあ、これを真に受ける人はいないと思うけど (笑)、一応以下指摘する。まず、「これ以上の」といった最上級の表現は、それだけで問題である。リンク先のページを見ても、最上級を裏付ける科学的根拠らしい情報の提示はない (あるわけがない)。また、「全額返金」などは虚偽であることが分かる (1箱目に限り「返品」は可能らしいが)。このような誇張・虚偽の表現を用いた広告は、健康増進法や景品表示法など関連法規に抵触しているはずである。
このような広告の表示について、ひとまず利用規約で認められる範囲内で対応すべく、広告の下に注意書きを自動挿入する対策を講じた。具体的には、ココログのメモリスト機能を使って、以下のようなスクリプト (JavaScript) を右側のサイドバーに埋め込んだ (画面には表示されない)。
<script type="text/javascript">
<!--
var message = '<div style="font-weight:bold;color:red;">(ブログ作者からのご注意)</div><span style="color:black;">この上に表示されている広告は、ブログ作者の意思に関わらず自動的に挿入されています。ブログサービス (ココログフリー) の利用契約上、ブログ作者は、サービスを無料で利用できる代わりに、これらの広告を改変、削除できません。関連法規やモラルを順守していない広告が表示されている可能性がありますので、ご注意ください。</span>';
function getFirstElementByClass(searchClass, rootElement, tagName) {
if (searchClass == null) {
return;
}
if (rootElement == null) {
rootElement = document;
}
if (tagName == null) {
tagName = "*";
}
var allElements = rootElement.getElementsByTagName(tagName);
var returnElement = null;
for (i = 0; i < allElements.length; i++) {
if (allElements[i].className == searchClass) {
returnElement = allElements[i];
break;
}
}
return returnElement;
}
function addMessage(element, message, valign) {
if (element == null || message == null) {
return;
}
if (valign == "top") {
element.innerHTML = message + element.innerHTML;
} else {
element.innerHTML = element.innerHTML + message;
}
}
function onLoadListener(e) {
addMessage(getFirstElementByClass("entry-body-bottom", document, "div"), message);
}
if (window.addEventListener) {
window.addEventListener("load", onLoadListener, false);
} else if (window.attachEvent) {
window.attachEvent("onload", onLoadListener);
}
// -->
</script>
このスクリプトは、広告の下にある空の div タグ (クラス名 entry-body-bottom) に、変数 message の HTML 文を自動挿入するものである。データの読み込み終了後、たとえば以下のように表示されているはずである。
(「薬事法・健康増進法逃れに利用される Google AdSense」末尾の広告を5月25日抜粋)
ブラウザにおいてスクリプト (JavaScript) の機能を無効にしている場合、この注意書きは表示されないが、Google AdSense による広告の自動挿入も JavaScript を利用しているため表示されず、それはそれで構わないことになる。
このスクリプトは自由に利用していただいて構わない。そのままメモリスト機能へコピー&ペーストすれば動作する (と思う)。大したことはしていないので、HTML と JavaScript のスキルが少々あれば容易に読解、改変できるだろう。ココログフリー以外のブログサービスでも、スクリプトを少々改変すれば利用可能な場合もあるだろう。なお、利用方法についての問い合わせには原則として回答しないことをご了承願いたい。
当初、ものは試しと思い、「これ以上の科学的根拠」広告について関係各所に削除を依頼していた。
まず、3月上旬に、ココログの問い合わせ窓口にて以下のように問い合わせてみた。
(途中まで省略)
このような誇張・虚偽の表現を用いた広告は、
健康増進法や景品表示法など関連法規に抵触しているはずですが、
Google の広告審査をすり抜けて表示されています。このような広告表示は、私だけでなく、
ブログサービスを提供しているニフティ様の信用をも毀損しかねないと
考えております。Google と直接の契約関係があれば、AdSense の管理機能によって、
個別の広告を指定してブロックする対策が可能です。
https://www.google.com/adsense/support/bin/answer.py?answer=9716
しかし、私はココログフリーの一利用者にとどまるため、
そうした対策はとれません。つきましては、ニフティ様に、以下のいずれかの対策をお願いしたく存じます。
・ニフティ様の AdSense 管理機能によって当該違法広告をブロックする。
・ニフティ様から Google に対し、当該違法広告を審査で除外するよう要請する。お手数ですが、よろしくお願いいたします。
期待はしていなかった。そうした管理の義務までココログ (ニフティ) が負っているとは思っていない。ココログよりも Google、さらには広告主自身の責任だろう。あくまで試しに問い合わせてみたという程度のものである。
返ってきたメールは、ほぼ予想通り、広告の掲載基準や内容についての指摘は Google へ直接連絡してくれ、という内容であった。
次に、Google AdSense ヘルプ センターの問い合わせ窓口にて同様の問い合わせをした。2日後に返ってきたメールには、「Googleアドワーズ広告は、事後承認システムによる即時掲載のプログラムのため、承認前の広告が一時的に表示されてしまうことがございます。」に続けて、「お客様のご指摘の広告につきまして確認させていただきますので、広告テキスト、表示URL等、広告の詳細情報をお送りくださいますようお願いいたします。」とあった。
広告テキストも表示URLも当然伝えていたので、応対用の定型文をそのまま返してきたのは丸わかりだった。そこは我慢して「詳細情報」をメールで送ったら、 (土日をはさんで) 4日後に返ってきたメールは以下のようなものだった。
小川創生様
Google アドワーズ広告の広告主によるサービスの不具合に関し、ご連絡いただきありがとうございます。
アドワーズ広告プログラムでは、企業が自社のサービスの広告を掲載する場を提供しております。
弊社では顧客サービスを重視しており、広告主様にはユーザーに対する質の高いケアを期待しております。
しかしながら、弊社においてすべての企業の活動を監視できるわけではなく、またそのような責任も負っておりません。
お客様からのご連絡を受けまして、弊社ではこの広告主のアカウントを確認し不適切な点があるかどうかを調査いたします。
お客様におかれましてはその企業が所在している都市の公的機関等と連絡を取り、調査を依頼していただきますようお願い致します。
Google AdWords Team
「不具合」だって (笑)。最近気づいたのだが、この文面はGoogle アドワーズ広告サポートのQ&Aとほとんど同じであった。しかし、いかんせんタイトルが「広告主によるサービスの不具合」うんぬんなので、どうやら当時は見逃していたようだ。英語の原文では "poor service" だから、そのまま訳すなら「劣悪なサービス」あたりが妥当だろう。こんなところで技術系のぼかし表現を使うとは。結局、定型文のコピーで2度もあしらわれてしまった。
それはさておき、「広告主によるサービス」や「すべての企業の活動」ではなく、広告の監視しか求めていないのに、Google は広告媒体としての責任を負うつもりはないということか。「調査いたします」とは言っているので一応しばらくの間様子を見ていたが、やはり当該広告は削除されなかった。
2度目のたらい回しだが、「その企業が所在している都市の公的機関等と連絡を取り、調査を依頼」せよと Google が言うので、当該広告主の所在地の大阪府健康福祉部薬務課医薬品流通グループ宛に、4月初旬にメールで連絡した。
「頂いた情報につきましては健康増進法、景品表示法担当部局に情報提供しました」という返事 (名前、所属、連絡先の署名付き) を2日後に頂いたものの、現在でも当該の広告は表示されている。対応の優先順位などの問題もあるだろうし、大阪府に対してあまりとやかく言うつもりはない。しかし、一般の市民ができることは、すでに一通りやり尽くしてしまった。
このように、ストレートに広告の削除を関係各所に要請しても、現状ではなかなか厳しいものがある。まして、一個人の利用者には、あれこれの広告にいちいち対応するのはほとんど無理であろう。
広告が自動挿入されない他のブログサービス (多くの場合は有料) に移転しようかとも考えた。しかし、面倒だし、少ないながらもリンクやブックマークがすでに張られている。広告以外の点についてはココログフリーをそれなりに気に入ってもいる。利用規約に触れない技術的対策を考えてこうして紹介するということにも一定の価値があるだろう。
あれこれ考え調べた結果、今回のような対策をひとまず講じておくことにしたという次第である。なお、自動挿入する注意書きの文面についてもあれこれ考えた。ニフティ (ココログフリー) のビジネスモデルに配慮し、「サービスを無料で利用できる代わりに」という文言をあえて加えた。「無料で利用しているくせに」「よそに行けばいいのに」と反射的に突っ込まれそうだが、そこはあえてそうした。それを言わないとフェアではないと思っている。
ところで、ココログフリーの Google AdSense について、ちょっと前までは「--- Ads by Google ---」と表示されていた。(リンクの色の違いはデザイン変更によるもので意味はない)
(「薬事法・健康増進法逃れに利用される Google AdSense」末尾の広告を3月9日抜粋)
それが、現在では「Sponsored Link」と表示されている。
(「薬事法・健康増進法逃れに利用される Google AdSense」末尾の広告を5月24日抜粋)
これは改悪であろう。Google AdSense を用いたココログフリーのビジネスモデルを、なぜ利用者に明示しようとしないのだろうか?あるいは、Google ではなくココログフリー (ニフティ) が広告について責任を負いますという意思表示なのだろうか?・・・たぶん違うだろう。
ココログフリー側の自動挿入広告の拡大に対応して、2008年3月にスクリプトを更新した。詳しくは「ココログフリーの自動挿入広告に対して注意書きを自動挿入するスクリプト Ver. 2」を参照。
先の記事「薬事法・健康増進法逃れに利用される Google AdSense」では、コンテンツ連動型広告 (Google AdSense) あるいは検索連動型広告 (Google AdWords) におけるキーワードの登録について、薬事法などの法規に抵触していないかチェックする責任が広告主や Google にはあるだろうと述べた。これについては、Google だけではなく、Overture (Yahoo! 傘下) も同様のサービスを展開しており、同様の議論が当てはまる。検索連動型広告では Google よりも日本の市場占有率は上であり、Yahoo!、MSN、エキサイトなど、およそ Google 以外の主要な検索サービスに Overture が導入されている。そこで、両社の比較を試みた。
Google と Yahoo! JAPAN の検索サービスにおいて、成分名または疾患・症状名を検索キーワードとし、当該成分を含む健康食品の広告リンクが現れるかどうかをテストした。疾患・症状名から広告リンクが現れるようだと、薬事法関連の広告審査や自主規制が甘いのではということになる。一方、疾患・症状名からも成分名からも広告リンクが現れないようだと、そもそも広告が存在しないのではということになる。つまり、成分名では広告リンクが現れ、疾患・症状名では現れない場合、薬事法関連の審査や自主規制が機能している可能性が認められることになる。
なお、成分名、疾患・症状名の選出においては、日経BPの「闘う男の健康食品講座 時間をかけずに,必要な栄養成分を摂る!」というサイトを参考にした。このサイトは、サントリーの「取材協力」のもとで藤木理絵さんという記者が書いた記事広告である。成分の医薬品的な効能効果をあれこれ記述した上でサントリーの (医薬品等ではない) サプリメント商品を紹介し、記事の最後では販売サイトにリンクするという構成である。典型的なバイブル商法のネット版であり、薬事法に抵触していると考えている。(このサイトについて、これ以上の話はまた後日ということで。)
疾患・症状名で検索して広告リンクが表示された場合に絞って、テスト結果を表にしてまとめた。限られたキーワードを対象としており、広告リンクについても、(私の)見落としがあり得る上に時々刻々と広告主は変化するだろうことを踏まえて、ご覧頂きたい。
成分名 疾患・症状名 |
Yahoo! JAPAN (Overture) |
有無判定対象とした広告リンク | |
---|---|---|---|
マカ | 有り (多数有り) | 有り (多数有り) | ・サントリーのマカ ・サントリーのマカ冬虫夏草 |
不妊 | 有り (サントリーのみ) | 無し | |
精力減退 | 有り (サントリーのみ) | 無し | |
グルコサミン | 有り (多数有り) | 有り (多数有り) | ・サントリーのグルコサミン ・辛い関節を何とかしたい方 (www.admate.jp) ・元気でアクティブな毎日を応援 (www.cgate.co.jp) |
関節痛 | 有り (サントリー以外も有り、 「その他のスポンサー」に サントリーが存在) |
有り (サントリーは無し) | |
アントシアニン (ブルーベリー) |
有り (多数有り) | 有り (多数有り) | ・サントリーのブルーベリー ・ブルーベリーならサントリー ・サントリー 瞳の健康法 ・目の疲れを感じたら! (kokoro33.health-life.net) ・TVで紹介されました (www.783793.com) ・甘酸っぱいおいしさで人気急上昇 (megu.vivian.jp) ・医者が選ぶサプリメントの通販 (www.ordersupli.com) ・パソコンなどよく使う方に (www.ably.co.jp) ・朝日新聞で取り上げられた (famima.foodpark.jp) |
疲れ目 | 有り (サントリー以外も有り) | 有り (サントリーは無し) | |
眼精疲労 | 有り (サントリー以外も有り) | 有り (サントリーは無し) | |
ドライアイ | 有り (サントリーは無し) | 無し | |
肩こり | 有り (サントリーは無し) | 無し | |
DHA, EPA | 有り (多数有り) | 有り (多数有り) | ・サントリーの「DHA&EPA」 |
血行不良 | 有り (サントリーのみ) | 無し | |
甜茶 | 有り (多数有り) | 有り (多数有り) | ・話題の快適グッズはケンコーコム (www.kenko.com) |
花粉症 | 無し (ただし他の成分の 健康食品は有り) |
有り (サントリーは無し) | |
ノコギリヤシ | 有り (多数有り) | 有り (多数有り) | ・サントリーのノコギリヤシ |
前立腺肥大症 | 有り (サントリーのみ) | 無し | |
残尿感 | 有り (サントリーのみ) | 無し | |
頻尿 | 有り (サントリーのみ) | 無し |
念のため、表に挙げた疾患・症状に対する効能効果が、各成分、各商品に本当にあるのかどうかは、ここでは考慮していない。医薬的な効能効果を標榜している時点で、真偽を問わず薬事法の規制の対象となる。薬事法以外の、たとえば健康増進法においては、虚偽・誇大かどうかが問われてくる。(そのうえでの参考として、国立研究・栄養研究所の「「健康食品」の安全性・有効性情報」によると、たとえばアントシアニンについては、「俗に、「視力回復によい」「動脈硬化や老化を防ぐ」「炎症を抑える」などといわれているが、ヒトでの有効性・安全性については、信頼できるデータが十分ではない。」としている。)
テスト結果を見る限り、どうやら、Yahoo! JAPAN (Overture) のほうが、薬事法関連の広告審査が厳しいように見える。
このことは、両者の規約等からも伺える。Overture においては、「掲載ガイドライン」という文書において、日本の薬事法による規制を明記している。
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、健康食品など
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器などの広告につきましては、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布することが法律により禁じられています。また、その効能効果について表現できる範囲が定められています。なお、公務所、学校、各種団体、医師などがこれらの医薬品などを指定、公認、推薦し、又は選用している旨などの広告も認められておりません。なお、健康食品、健康器具、美容器具、健康雑貨などについても、医薬的な効能効果を標榜した場合は、その規制対象となることがあります。所管官公庁が示す基準、考え方や具体的にどのような行為が違反とされているかについては、東京都福祉保険局健康安全室薬事監視課のホームページなどでご確認ください。
東京都福祉保険局健康安全室薬事監視課Webサイト
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/yakuji/kansi/cm/top.html
化粧品の効能効果の表現の範囲
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/yakuji/kansi/cm/cosme.pdf
一方、Google においては、「Google AdWords コンテンツ ポリシー」という文書において、かろうじて以下の一文が掲載されている。
妙薬
医薬品でないにもかかわらず効果効能を宣伝する広告は許可されません ("一晩でがんが治る" など)。(Google AdWords: コンテンツ ポリシー (日本語に切り替え) より引用)
「妙薬」ってなんぞや? と思い、英語の原文を当たってみた。実は、「医薬品でないにもかかわらず効果効能を宣伝する広告」という表現は、日本の薬事法に沿った改訂であることが分かった。
Miracle Cures
Advertising is not permitted for the promotion of miracle cures, such as 'Cure cancer overnight!'(Google AdWords: Content Policy (英語に切り替え) より引用)
「一晩でがんが治る」という例示がどうも極端だと思ったら、これはやはり「妙薬」の例示であった。Google なりの努力の跡は伺えるものの、いささか心もとない。
ただし、Google も日本の薬事法関連の広告審査をやっているそうだ (そりゃそうだ)。インターネット広告代理店の株式会社アイレップの記事「Google アドワーズの“審査”を再確認しよう」によると、登録キーワードと広告文の双方について、審査が行われているとのことである。検索連動型広告の Google AdWords では、まず、使用禁止キーワード (非公開) との自動照合を実施しているそうで、薬事法関連の使用禁止キーワードも用意されているとのことである。これに引っかかると、人間による事前審査に回されるそうである (引っかからなくても事後審査はある)。一方で、コンテンツ連動型広告の Google AdSense では、最初から人間による事前審査が行われるそうである。
一方、Overture では、検索連動型広告であっても、人間による事前審査が実施されているそうである。また、アイレップの別の記事「リスティング広告出稿における薬事法クリアのポイント」によると、少なくとも Overture の広告審査では、疾患・症状名のみならず、医薬的な効能効果を標榜する表現は実際に広告掲載お断りとなっているそうだ (Google でも、人間による審査は同様であろう)。
少なくとも、疾患・症状名をキーワードに登録することは、それだけで医薬品的な効能効果を標榜しているとみなされる。テスト結果では Yahoo! JAPAN (Overture) と比べて審査漏れの目立つ Google においても、成分名で検索した場合と比べて疾患・症状名で検索した場合の当該広告リンクは激減している。一定の審査あるいは自主規制が効いていることは十分に伺える。
とはいえ、いくつかの疾患・症状名で Google 検索してみると、サントリーの広告リンクの審査漏れは際だっている。他社が手を引いてしまうようなキーワードでも、サントリーだけが健康食品のリンク広告として表示されているという場合が Google では散見される。その理由として、そういう宣伝方針なのがサントリーのみであるという可能性のほかに、Google の審査をすり抜けやすい独自のノウハウやコネを持っているのかもしれない (あくまで想像だが)。
さて、本来こういうテストは、網羅的、定期的に実施するべきだろう。しかし、私一人ではとても手に負えそうもない (苦笑)。どこかの信頼できる公的機関がやってくれないだろうか?
まず、「症状別サプリメント逆引き事典」というサイトの、不妊に悩む人にマカ等を勧めるページから抜粋した以下の画像を見てもらいたい。
(「不妊の悩みを解消したい:症状別サプリメント逆引き事典」の表示画面を1月28日抜粋)
不妊に悩む人にマカを勧めること自体はあくまで表現の自由の範ちゅうである。しかし、Web ページにおけるこのような状態は、健康食品の広告を規制する薬事法や健康増進法などの関連法規逃れではないか?というのがこのブログ記事の主旨である。
なにも該当事例はこのサイトだけではない。もうひとつ、Sankei WEB (産経新聞) のページから抜粋した以下の画像を見てもらいたい。(サントリーに注目)
(「そろそろ季節… 花粉症グッズはそろってますか?|健康|生活・健康|Sankei WEB」の表示画面を1月30日抜粋)
花粉症に効くという科学的根拠がたとえあったとしても、単なる飲料やサプリメントである限り、このような状態は薬事法に抵触するのではないか?(この事例の場合、サントリーへのリンクのタイトルが「花粉の季節を乗切る準備を」となっているのは、サントリー単体でも問題があると思われる。) ただし、産経新聞の記事自体はあくまで表現の自由の範ちゅうであるというところに注意して欲しい。そこがこの話のポイントである。
なお、これらのサイトや広告リンクを事例として取り上げたことについては、分かりやすい事例をそこで見つけたという以上の他意はない。たとえば asahi.com (朝日新聞) や YOMIURI ONLINE (読売新聞) も Google AdSense を導入しており、健康食品会社等の PR をそのまま記事にした場合は同様の状態が発生する可能性がある。実際、さまざまなサイトでこうした事例は散見される。
このブログ記事の末尾にも、広告リンクが「--- Ads by Google ---」として自動的に挿入されている。Web サイトの文章からキーワードを拾い出し、それに該当する広告リンクを表示するということを、Google が自動的に行っている。これを Google AdSense (グーグル アドセンス) と呼ぶ。広告主は、キーワードを指定し、キーワードの人気度に応じて Google に登録料 (オークションで決定) を支払っている。ココログの無料版 (ココログフリー) では、無料でブログサービスを提供する代わりに、Google AdSense をブログに挿入し、広告リンクのクリック回数に応じてニフティが Google から成果報酬を得るという構図となっている。ココログフリーのブログの作者 (たとえば私) は、その広告を改変・削除しないという利用条件に同意した上でココログフリーを無償利用している。
Google AdSense によってどんな広告リンクが表示されるのかは、表示されてみないと分からない。Web ページを更新すれば広告リンクも当然変化するし、何も Web ページを更新しなかったとしても、Google 側の広告主データベースが更新されれば、やはり広告リンクも変化する。そして、表示したくない広告を個別に指定して除外するといった管理も可能である。ただし、このココログフリーについて言えば、Google と直接契約しているココログ (ニフティ) にはそうした管理が可能であるものの、ブログの作者 (たとえば私) には不可能である。
あらためてネットサーフィンしてみると、新聞やブログに限らず、さまざまなサイトがすでに Google AdSense を導入していることが分かる。テレビにおける電通のような地位を、インターネットでは Google が占めそうな勢いである。
さて、健康食品の広告や表示の法的規制については、法律の素人 (たとえば私) でも分かるように、東京都福祉保健局健康安全室のサイトで詳しく説明されており、関係資料も入手できる。薬事監視課監視指導係の「医薬品等の広告規制について(薬事法)」と健康安全課食品医薬品情報係の「「健康食品ナビ」 健康食品を取扱う際の確認ポイント」あたりを入り口として閲覧すると情報を探しやすい。
健康食品の広告や表示は、主に以下の法律によって規制されている。
たとえば「不妊にはマカが効きます」と言うこと自体は表現の自由であるが、マカから製造したサプリメント (栄養補助食品であって、栄養「機能」食品ではないことに注意) などの商品広告において記載すると、不妊に効くと認められた医薬品、医薬部外品、特定保健用食品、栄養機能食品のいずれにも該当しないならば、薬事法第68条 (承認前の医薬品等の広告の禁止) に違反することになる。また、実際にマカが不妊に効くのかどうか、国立健康・栄養研究所では「健康な男性の性欲を改善することが示唆された」とする1文献しか把握していないようであり、もしも科学的根拠がないのならば、健康増進法第32条の2 (誇大表示の禁止) にも違反することになる。他社食品との差別化を図った誇大・虚偽の表示ということであれば、景品表示法第4条第1項第1号 (不当な表示の禁止) にも違反することになる。さらにインターネット上の通信販売の広告ならば特定商取引法第12条 (誇大広告等の禁止) にも違反することになる。
なお、「納豆の成分には体脂肪を減らすダイエット効果がある」という納豆の広告においては、納豆は明らかに食品と認識されるもの (「明らか食品」) なので、薬事法違反には該当しない。特定の納豆商品に限った広告というわけでなければ、景品表示法違反にも該当しない。しかし、納豆の成分が体脂肪を減らすという科学的根拠がないのならば、健康増進法に違反することになる。(2月20日訂正: 「通信販売の広告なら特定商取引法に違反することになる」と記述していたが、納豆は同法の指定商品の番号1「動物及び植物の加工品(一般の飲食の用に供されないものに限る。)であって」(以下略) に該当しないと考えられるため、記述を削除した。サプリメントであれば該当する。) なお、納豆ではなくイソフラボン・サプリメントであれば、薬事法違反にも該当する。
広告という形を取らず、書籍等における表現の自由を悪用しようとしているのが、いわゆるバイブル商法である。健康食品の効能、効果、体験談等をバイブル本として自由に書き立て、巻末等に販売業者の連絡先を記述しておくという手口である。これについては厚生労働省から関係団体あてに「書籍の体裁をとりながら、実質的に健康食品を販売促進するための誇大広告として機能することが予定されている出版物(いわゆるバイブル本)の健康増進法上の取扱いについて」という通知が2004年7月に出されており、悪質な業者には行政指導がなされている。これは、先に挙げた健康増進法第32条の2 (誇大表示の禁止) が2003年8月に施行されたのを受けてのものである (そもそも薬事法等にも違反しており、通知にもその旨記載されているのだが、なぜそれまで野放しに?)。
ただ、もうひとつ正確に把握しきれないのは、インターネット上のリンクについての法的規制である。
ひとまず以下の4通りの態様に分類してみる。
1と 3は、サイト管理者が共通であり、実質的には同一の態様である。販売サイトと解説サイトを一体とみなせる。
2は、たとえばイソフラボン・サプリメントの製造・販売業者が「発掘!あるある大事典II」の公式サイト (番組打ち切り発表とともに1月23日閉鎖) にリンクを張っていた場合が該当する。Aは製造・販売業者、健康食品Xはイソフラボン・サプリメント、Bは関西テレビ、成分Pはイソフラボンである。
4は、要するにバイブル商法のネット版である。
リンクについて言及している厚生労働省の文書としては、主に健康増進法に関する、「食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)に係る留意事項」(2005年6月最終改正) と「健康増進法上問題となるインターネット広告表示(例)」(2004年1月) を見つけた。ただし、これらの文書が言及しているのは1、3、4であり、2については言及されていない。また、薬事法など、他の法律について同じ条件をそのまま適用するのかどうかは定かではないが、そもそもの趣旨からして、ほぼ同様の条件なのではと推察する。
1と3については、議論の余地は小さいだろう。
2については、リンク先、たとえば「発掘!あるある大事典II」の公式サイトが直接に違法性を問われることはないと思われる。しかし、リンク元の製造・販売業者の片棒担ぎと見られるのを嫌ったのか、先の記事でも記したように、「あるある」の名前を使って商品を販売する業者と当番組とは一切関係ないとの「ご注意!」というポップアップが表示され、さらに、産業技術総合研究所の高木浩光さんのブログ記事「あるある大事典が「一切リンクお断り」としていた心境を推察すると見えてくるもの」にもあるように、「当HPへのリンクについては、一切お断りしておりますのでご了承ください。」と赤字で書かれていた。
もしかしたら、「あるある」は何らかの法的リスク (違法業者がリンクしたがる誇大・虚偽のサイト内容を放置することが民法上の不法行為と認定されてしまうとか) を恐れていたのかもしれない。Internet Archive によると、「リンク一切お断り」赤字表記が追加されたのは2004年8月頃、「ご注意!」ポップアップが追加されたのは2005年3月頃であり、健康増進法改正による規制強化後にそうした追加が施されたことになる。内容を改めるのが本筋のはずなのに。何かの免罪符のつもりだったのだろうが、「放送が国民に最大限に普及」「放送の不偏不党、真実及び自律を保障」というような原則を記した放送法の精神に「あるある」が背いていたのは、こうした Web 上の事象からも読み取れていた。
話を元に戻す。4 (バイブル商法のネット版) については、リンク元 (A) の解説サイトが以下の条件を満たすとき、厚生労働省は健康増進法違反と判断するそうだ。
そして、規制の適用を受けるのはリンク元 (A) で、執るべき是正措置はリンクの削除となる。販売サイトを管理するリンク先 (B) がリンク元 (A) にリンクを依頼していた場合は、当然リンク先 (B) も規制の適用を受ける。
ここで、冒頭で挙げた画像をもう一度見てもらいたい。
(「そろそろ季節… 花粉症グッズはそろってますか?|健康|生活・健康|Sankei WEB」の表示画面を1月30日抜粋)
先ほどの三つの条件が薬事法にそのまま適用されるのかどうかは分からないが、条件はすべて満たしているように見える。議論の余地が残されているとすれば、Google AdSense によるそうした自動的な表示に「顧客を誘引する意図が明確にある」かどうかであろう。
ただしこの事例において、広告主のサントリーには、Google AdSense を利用して「顧客を誘引する意図が明確にある」ようである。Google で「花粉」をキーワードにして検索した以下の画像を見てもらいたい。
(Google で「花粉」をキーワードにして検索した表示画面を2月2日抜粋)
右側のスポンサー欄の上から3番目にサントリーの「甜茶」が表示される。なんと、その上下には、サッポロ飲料の「ホップ研究所」とアサヒ飲料の「べにふうき緑茶」も表示されている (苦笑)。当該の記事に出てくる「花粉症対策商品」のうち、ビール系飲料メーカー3社すべてが表示されていることになる。
そして、リンク先のサントリーとサッポロ飲料のサイトには、当然ながら花粉症に対する効能は記載されていない。自社サイトに直接書いてしまうと薬事法に抵触するからである。なお、アサヒ飲料の場合は、「花粉アシスト!」というれっきとした栄養機能食品とセットで緑茶を販売するという、つい感心 (笑) してしまうような手法である。
Google 検索において、このようなキーワードに連動した広告リンクを表示する機能を、Google AdWords (グーグル アドワーズ) と呼ぶ。Google AdSense と同様に、あらかじめ広告主がキーワードを指定し、オークションで決定した登録料を Google に支払っている。そして、偶然の要素を否定できない Google AdSense と違って、Google AdWords は100%意図を持った表示である。つまり、サントリーなどビール系飲料メーカー3社には、「花粉」というキーワードから自社サイトへ「顧客を誘引する意図が明確にある」ということになる。そして、Google AdWords においてその意図を確認できれば、Google AdSense における偶然の要素は否定される。「花粉」というキーワードが Web ページにあれば Google AdSense が自動的に広告リンクを表示することを、サントリーは明確に意図しているわけである。
ちなみに、「不妊」をキーワードにして検索してみると、「サントリーのマカ」が現れる。そんなばかな (笑)。どうも複数の商品で常態化しているようだ。
広告主、Google、Google AdSense を導入する Web サイト、それぞれにどのような責任があるのだろうか?キーワードの指定に関しては広告主の責任だし、Google にも広告代理店としてそれをチェックする責任があるだろう。では、Google AdSense を導入する Web サイトは?自社の広告では言えない事柄を、表現の自由が許される Google AdSense 付きマスメディアを利用して PR している場合は?・・・すでに長文になってしまったので、ひとまずこれくらいにしておく。
最後に、この下に表示されるであろう Google AdSense について、どんな広告リンクが表示されるのか、私には管理不能であることを念のため繰り返しておく。
Google AdSense に関して、カテゴリー「広告」にその後の記事あり。
最近聞いた話として、カードローン機能付きの銀行系クレジットカードを誰かに盗まれたうえに、ATMにて不正にカードローンを利用されたという話があった (本当に不正なのかは確認できないが)。
お恥ずかしい話だが、カードローンなるものをつい最近まで知らなかった (キャッシングは知っていたけど)。自分自身の所持しているクレジットカードにもそのような機能がついていることを正確に認識していなかった。銀行のキャッシュカードでも、口座開設時の契約によってはクレジットカード機能だけでなく銀行独自のカードローン機能が付加されている場合があるようで、口座開設後でもたいていの銀行ではカードローン機能を付加することができる。1枚のカードで、キャッシュカード、カードローン、デビッドカード、キャッシュカード、電子マネーなど様々な機能を利用できることを、程度の差こそあれ銀行は積極的にアピールしている。
人それぞれだろうが、私はそんな「利便性」にちっとも魅力を感じない。お金を借りる必要がしばしばある人にはいいことなのかもしれないが、不正利用される危険のほうがずっと心配な人には脅威でしかないだろう。クレジットカードは、買い物が出来ればそれでいい。キャッシュカードは、預金の出し入れと振り込みが出来ればそれでいい。そう思っている人たちに、お金を借りる機能の存在、危険性、解除する方法などが適切に説明されているだろうか?おそらくそうではないだろう。
冒頭の話においては、誰かに不正利用されたと主張する当人が銀行に電話をしてみたら、「たとえカードを盗まれても暗証番号を知らなければカードローン機能は他人に利用されないはずで、何者かによる不正利用とは認められない (当人の故意か過失としか考えられない)。利用した金額は返済してもらう。」との返答だったという。まあ、そんなものだろう。実際に不正利用だったのか、当人 (あるいはその周辺人物) の故意なり過失があったのか、本当のところは分からない。しかし、たかだか4桁の暗証番号にきわめて重要な意味を持たせていることが、この事例からも見いだすことが出来る。
そういえば今年 (2006年2月) は預金者保護法が施行されたのだから、一定の条件を満たせばきちんと保護されるのではないか? と最初は誤解した。しかしよく調べてみると、クレジットカードは法的保護の対象とはなっていない (独立行政法人 国民生活センターの2006年9月6日報道発表資料「クレジットカードのスキミング等の不正使用に関するトラブル」 などの情報より)。保護されるのは、銀行のキャッシュカードか通帳を用いた、ATMにおける取引だけである (キャッシュカードで利用するカードローンは含まれる)。2年後には法律の見直しが行われるそうで、今後の法律改正が待たれる。
ただし、法的保護はなくてもクレジットカード会社が自主的に補償制度を設けていれば問題ない。かなり多くのクレジットカード会社では、暗証番号を使われた上での被害だとしても、利用者に非がないとカード会社が認めれば負担を求めない条項を規約に盛り込んでいる。3社の規約を引用して以下例示する。
第7条(暗証番号) 1. 会員は、カードの暗証番号(4桁の数字)を両社に登録するものとします。ただし、会員からの申し出のない場合、または当社が暗証番号として不適切と判断した場合には、当社が所定の方法により暗証番号を登録し通知します。2. 会員は、暗証番号を他人に知られないように善良なる管理者の注意をもって管理するものとします。カード利用の際、登録された暗証番号が使用されたときは、その利用はすべて当該カードを貸与されている会員本人による利用とみなし、その利用代金はすべて本会員の負担とします。ただし、登録された暗証番号の管理につき、会員に故意または過失がないと両社が認めた場合には、この限りではありません。3. 会員は、当社所定の方法により申し出ることにより、暗証番号を変更することができます。ただし、ICカードの暗証番号を変更する場合は、カードの再発行手続きが必要となります。
JCB会員規約(個人用)
第4条(暗証番号)
(1)お申込み時にお届けいただく暗証番号は、生年月日・電話番号等他人に容易に推測される番号を避け、ご本人以外の方に知られないよう注意していただきます。
(2)ご本人以外の方に暗証番号を知らせ、又は知られたことから生じた損害は、会員のご負担といたします。但し、会員の故意又は過失のなかったことが当社で確認できた場合は、会員のご負担とはなりません。
(3)会員から暗証番号の届出がない場合には、当社が所定の方法により暗証番号を登録する場合があることをご承諾いただきます。
《セゾン》カード規約
第4条(暗証番号)
(1) 当社は、会員より申出のあったカードの暗証番号を所定の方法により登録します。暗証番号が登録されるまでの間は、ご利用いただけるカードの機能が制限されることがあります。また、会員は暗証番号が本人確認用の番号であることを認識し「0000」「9999」および生年月日、電話番号、自宅住所等から推測される番号以外の数字を選択し登録するものとします。なお、会員から暗証番号の申出がないときは、当社が定める暗証番号を登録させていただく場合があり、この場合は会員にその旨を通知します。また、会員から申出のあった暗証番号について当社が不適切と判断した場合は、当社の別に定める暗証番号を登録させていただく場合があり、この場合会員にその旨を通知します。
(2) 会員は、暗証番号を他人に知られないよう、善良な管理者の注意をもって管理するものとします。登録された暗証番号が他人により使用された場合は、その損害は会員の負担となります。ただし、登録された暗証番号の管理について、会員に故意または過失がないと当社が認めた場合は、この限りではありません。
NICOSカード会員規約
この他、UFJカード、DCカード、ライフカード、オリコカード、ダイナースクラブカード、アメリカン・エキスプレス・カード、Yahoo!カードなどにも同様の条項がある (余談だがWeb上に掲載されている規約の見つけやすさにはカード会社によってかなりの差がある。オリコカードについては入会申し込み開始時のページに載っているのをやっと見つけたので、それに直接リンクを張っている。なお、VISA、MasterCardについてはネット上で規約を見つけられなかったが、これらは他のカード会社が発行しているものを利用するだろうから、そちらの規約が適用されるはずである。)
一方で、利用者に非がない場合でも補償してもらえなさそうな大手クレジットカード会社も少数だが存在する。
第8条(暗証番号)
1.当社は、本会員より申出のあったカードの暗証番号を所定の方法により登録します。但し、申出がない場合または当社が定める指定禁止番号を申出た場合は、当社所定の方法により登録します。
2.会員は、暗証番号を他人に知られないよう、善良なる管理者の注意をもって管理するものとします。カード利用にあたり、登録された暗証番号が使用されたときは、当社に責のある場合を除き、本会員は、そのために生ずる一切の債務について支払いの責を負うものとします。
三井住友VISAカード&三井住友マスターカード会員規約(個人会員用)
第4条(暗証番号)
1.当社は会員からのお申し出により、カードの暗証番号(4桁の数字)を登録するものとします。ただし、下記に該当する場合は、当社所定の方法により登録するものとします。
(イ)会員からのお申し出のない場合。
(ロ)当社が禁止している番号のお申し出があった場合。
2.会員は、暗証番号を第三者に知られないよう善良なる管理者の注意をもって管理するものとします。
3.カード利用に当たり、登録された暗証番号が使用されたときは、第三者による利用であっても、当社に責がある場合を除き、会員はそのために生ずる一切の債務について支払いの責を負うものとします。
UCカード 会員規約
この他、livedoor カード (三井住友の規約をそのまま適用) なども同様である。いざ被害に遭った利用者がカード会社に連絡しても、反応はきっと芳しくないだろう。こうした要素もカード選びの重要な考慮点となる。
少々興味深いのはりそなカードで、「りそなカード《セゾン》」と「りそなJCBカード」は前者に倣い、「りそなVISAカード」と「りそなUCカード」は後者に倣っている。同じりそなカードの利用者でもこの条項が運命の分かれ目となる可能性があるのだが、入会時にそうした違いをきちんと説明している可能性はおそらくほとんどゼロだろう。冒頭の話というのは、実はこの後者に該当していた。
Yahoo! は前者、livedoor は後者であるのを見て、楽天はどうなの?と思う人も多いだろう。楽天カードの例を真打ちとして以下示す。
第3条(暗証番号)
(1)当社は、会員より申出のあったカードの暗証番号を所定の方法により登録するものとします。ただし、会員からの申出がない場合は、当社所定の方法により暗証番号を登録するものとします。
(2)会員は、暗証番号を「0000」「9999」および生年月日、電話番号等他人から推測されやすい番号を避け、また他人に知られないよう善良なる管理者の注意をもって管理するものとします。
(3)カード利用の際、登録された暗証番号が使用されたときは、暗証番号について盗用その他事故があっても、そのために生じる一切の債務について会員が支払の責任を負うものとします。
楽天カード会員規約 (リンク不能な入会申し込み画面より引用)
楽天側に重大な責があったとしても補償しないつもりなのだろうか? (ついでに言うと、楽天の奇異な規約はこれだけではない。楽天ブログの利用規約でも著作権に関して他のブログサイトでは見られない不利な条件を課していたりしている。他にも楽天に言いたいことはいろいろあるのだが、楽天のサービスは注意して利用すべしとだけ言っておく。)
繰り返すが、現状として4桁の暗証番号はきわめて重要な意味を持ってしまっている。プログラミング関係の著書がある大垣靖男さんのブログ記事「yohgaki's blog - カード暗証番号入力の問題 (2005年4月4日)」にも書かれているとおり、クレジットカードの利用においては、署名で済む場面では署名で済まし、暗証番号は入力しない方がよい。暗証番号を盗まれてしまうと、不正利用された際の状況が著しく不利になってしまう可能性がある。そうしたリスクは出来るだけ避けたいものだ。
さて、産業技術総合研究所の高木浩光さんのブログ記事「飾りじゃないのよCAPTCHAは ~前代未聞のCAPTCHAもどき(2006年8月10日)」「三井住友カードのCAPTCHA風無意味画像は月替わり?(2006年9月30日)」においては、三井住友カードのログイン画面におけるCAPTCHAの実装が不適切でセキュリティ向上につながっていないという指摘がなされている。
CAPTCHAというのは、人手を介さない自動プログラムを用いた機械的なアクセスを排除するための仕組みで、機械では読み取りにくい文字を書いた画像を表示し、その文字をユーザ名やパスワード等とともに入力してもらうことによって、文字を読める人間がアクセスしていることを確認するためのものである (詳しくはWikipedia日本語版「CAPTCHA」などを参照)。機械的な掲示板荒らしや無料メールアドレス取得などを防ぐ際に用いる対策である。ただし高度な画像認識能力を併せ持つプログラムには無力のため、あくまで補助的な対策として認識されるべきものである。
三井住友カードでは、当初はクレジットカードの16桁の会員番号と4桁の暗証番号だけで、インターネットサービス「Vpass」が利用できるようになっていた。その後CAPTCHAが導入され、また、第三者に類推されやすい暗証番号でのログインは2006年8月21日より出来ないようにしたという。
この三井住友カードの事例において、CAPTCHAを導入して機械的なアクセスを排除しようとする目的として素直に思いつくのは、暗証番号を0000から9999まで総当たりで機械的に試す攻撃に対する防御である。しかし、こうしたログイン画面では、3回なり5回なりログインに失敗すれば、ただちに利用停止の措置を取るのが普通である。さらに、クレジットカードの場合はネット以外でも同じ暗証番号を用いるのだから、そのクレジットカードの利用全体を停止すべきである。そうした普通の対策をせずに、CAPTCHAというその場しのぎの対策を施していたのだろうか?本当のところは分からない。
(この段落10月9日19時頃追記、20時頃修正) 暗証番号だけでなく、16桁の会員番号も機械的に変化させてアクセスする試行もあり得る。個人情報が流出して、生年月日、電話番号、住所などの情報も入手できていれば、暗証番号を的中させる確率を (機械的に) 向上させることができる。第三者に類推されやすい暗証番号を8月からログイン不可とした理由の一つはそれかもしれない。
高木浩光さんのブログ記事では、そもそも三井住友カードがCAPTCHAを導入した理由について、「何の目的で導入されたのかについては言わない」「どのような危険なのかはまだ言うわけにはいかない」としている。また、「身に覚えのない請求に対して不正使用ではないかと申し出たときに、もし、暗証番号を使用した決済であることを理由に、本人による使用だと見なされるようなことが起きたら、このシステムが原因である疑いがある」とも記している。暗証番号について何らかの重大な危険が生じていた (あるいは生じている) ことは確かなようだ。(「あるいは生じている」は10月10日追記)
なお、先に述べたように、三井住友カードの規約では、「当社に責のある場合を除き」、暗証番号が使用されたときに生じる一切の債務について、利用者が支払いの責を負うことになっている。(以下10月9日19時頃追記) そもそも、利用者に非がない場合の救済が規約に明示されていないのに、クレジットカードの会員番号と暗証番号だけでログインできるWebインタフェースが存在すること自体、何かの危険を疑った方がよいかもしれない。
私が寄稿したウィキペディア (Wikipedia) 日本語版の記事「SOA (サービス指向アーキテクチャ)」の一部分を、NTTデータ イントラマートのプレスリリースにて引用されていた。(寄稿の経緯などについては先日の記事で紹介したコラムを参照されたい)
(10月27日追記) この件について、NTTデータ イントラマートの経営企画室の方から謝罪のメールを頂きました。文末の追記もご覧ください。
現在の最新版の第1段落は以下の通りである。
ソフトウェア工学において、サービス指向アーキテクチャ(サービスしこうアーキテクチャ、Service-Oriented Architecture、SOA, 「エスオーエイ」あるいは「ソーア」と発音)とは、大規模なコンピュータ・システムを構築する際の概念あるいは手法の一つであり、業務上の一処理に相当するソフトウェアの機能をサービスと見立て、そのサービスをネットワーク上で連携させてシステムの全体を構築していくことを指す言葉である。業務処理の変化をシステムの変更に素早く反映させたいという需要に応えうるものとして、2004年頃からIT業界において注目を集めている。
Wikipediaの執筆者たち, "サービス指向アーキテクチャ", Wikipedia 日本語版, 2006年9月5日 22:04 (UTC).
私が寄稿した2005年の時点では以下の通りであり、ほとんど最新版と同一である (最新版では英語表記と読み仮名を追加してくれている)。
ソフトウェア工学において、サービス指向アーキテクチャ(SOA, 「エスオーエイ」あるいは「ソーア」と発音)とは、大規模なコンピュータ・システムを構築する際の概念あるいは手法の一つであり、業務上の一処理に相当するソフトウェアの機能をサービスと見立て、そのサービスをネットワーク上で連携させてシステムの全体を構築していくことを指す言葉である。業務処理の変化をシステムの変更に素早く反映させたいという需要に応えうるものとして、2004年頃からIT業界において注目を集めている。
小川創生 (利用者名「Sousei」), "サービス指向アーキテクチャ", Wikipedia 日本語版, 2005年12月1日 00:55 (JST).
そして・・・
SOAとは、業務上の一処理に相当するソフトウェアの機能をサービスと見立て、そのサービスをネットワーク上で連携させてシステムの全体を構築していくことを指す言葉であり、業務処理の変化をシステムの変更に素早く反映させたいという需要に応えうるものとして、2004年頃から注目を集めています。
株式会社NTTデータ イントラマート, "NTTデータ イントラマート、Webシステム構築ソフトウェアの新製品「intra-mart ver.6.0」をリリース", 2006年8月8日.
(10月27日追記) 現在は修正されています。文末の追記もご覧ください。
これは偶然あるいは不可避な一致ではなく、引用に該当するはずである。文書を引用して利用すること自体は自由である。しかし、このNTTデータ イントラマートによる引用については、厳密に言うならば以下の点が不公正と認識している。
前者は著作権、後者は著作者人格権 (同一性保持権) の侵害となりうる。著作権者に該当する者としては、原著作者 (小川創生)、二次的著作物の著作者 (ウィキペディア財団、あるいは私の記事を修正してくれた人たち) が考えられるところ、引用された部分はすべて私の執筆した文章であるため、この件においては著作権も著作者人格権も私 (小川創生) が持っていることになる。
「ウィキペディアは不特定多数の人々が作成した記事を無料で公開しているのだから、著作権など存在しないのでは?」という疑問を持つ人もいるかもしれないが、それは誤りである。ウィキペディアでは、寄稿者も利用者も GNU Free Documentation License (GFDL) と呼ばれるライセンスに従う必要がある。GFDLでは、文書の共有とその自由な発展を恒久的に保証するために、寄稿者の権利に制限を課している。ただし、著作権自体を放棄しているわけではなく、あくまで寄稿者が著作権を保持することになっている。
「ウィキペディアの寄稿者って匿名だから、たとえ理論上は著作権や著作者人格権が存在したとしても、実際には権利を行使できないのでは?」と思う人もいるかもしれない。しかし、アカウントを作成して利用者ページ等で実名を明かしている寄稿者、たとえば私 (利用者:Sousei) の場合はどうだろうか。誰が寄稿したかという立証はそれほど難しくないはずである。たとえ現時点で実名を明かしていなくても、あとから明かすということもあり得る。より確実な方法でいくなら、法的に実名を登録することもできるはずである (著作権法75条)。そして、たとえ匿名 (無名) またはアカウント名 (変名) のままでも、寄稿者に代わってウィキペディア財団 (発行者) が権利を行使することもできる (著作権法118条1項)。あまり甘く見ないほうがいいと思う。
法的な問題から少々距離を置いた私の思いとしても、「ウィキペディアより引用」と一言付記してくれればいいのに、といったところである。語尾を「ですます」調に変えるくらいのことは全然構わない。そもそも、無償で利用されることを承知の上で寄稿しているのだから、引用どころか全文を転載されたとしても、それが悪用でない限りはむしろ歓迎すべきことだとさえ思う。しかし、元のNTTデータ イントラマートのプレスリリースはオープンソース・ソフトウェアに関するものであるだけに、このような問題については少々神経質になってしまう。無償でコンテンツを提供している人々に対して、最低限の敬意を払うべきだし、また、私も一利用者として払わなければならないと思っている。
参考までに、当該のウィキペディアの記事を適切に引用している例を二つほど見つけたので、以下挙げておく。
なお、「こういうことはブログに書かずに、直接NTTデータ イントラマートに言えばどうか?」と思った人もいるかもしれない。しかし、プレスリリースというのは、リリースされた時点で修正不能あるいは修正を請求する意味がない状態となる性質の文書だと思う ((10月27日追記) 元の Web ページは修正されています。文末の追記もご覧ください)。現に「日経プレスリリース」にもそのまま同じ日に転載されている。また、権利の侵害とはいっても具体的な損害はない (むしろブログのネタという利益を得ているかも)。権利者として何かを請求するのでないならば一般的な批判と同じである。そして、元の件から派生する一般的な注意喚起のほうを主に記したかったため、このブログでの掲載とした。批判の範囲を逸脱した名誉棄損などには該当しないよう注意を払った。
ちなみに、今回の件は引用であるから GFDL に関わらず利用できるが、利用の程度が転載に及ぶ場合は、(「フリー百科事典」という言葉からは一般の人が連想できないような) GFDL の制限が利用者にも課せられるので注意されたい。オープンソース・ソフトウェアに明るい人なら、GPL (GNU General Public License) と同種の厳しいライセンスだと言えば、それで通じてしまうだろう。しかし、そうしたライセンス形態に初めて接するのがウィキペディアだという人のほうが大多数だろうし、そうした意識の差は今後さまざまな形で顕在化していくかもしれない。
この件について、昨日 (10月26日) NTTデータ イントラマートの経営企画室の方から、謝罪のメールを頂きました。メールでは、不適切な引用の事実関係を認めて謝罪した上で、悪意はなかったこと、プレスリリースにおいて引用の有無を確認するプロセスが欠けていたこと、同社内の技術者がこのブログ記事に気づいて社内連絡したのが今回の対応のきっかけであることなどを伝えて頂きました。また、元のプレスリリースを掲載している同社の Web ページについては修正を施したとの報告を頂きました。
本文中にも記した通り、特に何かを同社に請求するつもりはなかっただけに、率直に言って、今回の同社の対応には驚くとともに感謝しています。同社の益々のご発展を祈願いたします。
勤め先 (大和総研) のWebサイトに、「Webフリー百科事典「ウィキペディア」にて「SOA」を寄稿してみた」というコラムを先々週に執筆、掲載した。
おおよそ半年に一回、コラム執筆の機会が巡ってくる。せっかくの機会だからと思うと、ついついあれこれ考え長々と書いてしまう。結局15時間くらい執筆に費やしてしまっただろうか。本来は800字程度が目安となっていて、他の方々のコラムは長くとも1000~1500字程度で収まっているのだが、私の場合は、いつもそれをさらに上回ってしまう。今回も2300字を超えていた。そんな原稿をいつも通してくださる担当者の方に感謝申し上げたい。
コラムのなかで、ウィキペディア (Wikipedia) はフリーで利用できる一方で、その寄稿や編集には (まじめに取り組めば) 多大な労苦を伴うということを体験談として書いた。しかしながら、そうした非合理性を補う知的な楽しさがあるのも事実である。誰の指図もなく、同時に自らの主張からも一歩引いたところで記述していくというのは、なかなか他では得がたいものがある。そうした楽しさまでコラムで書ききれなかったことは、少々心残りである。
さて、ウィキペディアには多言語対応の百科事典であるという大きな特徴がある。同じ項目について、それぞれの言語の記事を読み比べることができるし、他言語での表記を織り交ぜた解説も多い。技術的なことを言えば、これは UTF-8 (Unicode) を軸としたOSやブラウザの多言語対応が進んだ恩恵によるところが大きい。そして、これはもう、新たな活字文化の創出だと思う。
ただ、コラムにも書いたが、どうも日本語版の出来が芳しくない例が目立つ。イデオロギーに関わるような項目は特にそうだ。たとえば以下の三つを見比べてみるとはっきり見て取れる。
天安門事件 (1989年) の記事は、中国政府が中国国内からウィキペディアへのアクセスを制限するきっかけになったと伝えられているほど、政治的、歴史的にセンシティブなものである。中文 (中国語) 版ではかなり詳細な記述がなされている一方で、いわゆる「荒らし」も登場し、現在は編集停止の状態になっている。そうしたことを克服している英語版は、「秀逸な記事 (Featured Article)」に選出されるほど、詳細かつ客観的な記事に仕上がっており、大変参考になる。
そして、日本語版・・・何も言うまい。辞書を引きながら英語版を閲覧することをお薦めする。
実はコラムにおいて、「ともすれば日本語版は、閲覧に堪えるべき百科事典を執筆しているという自覚を欠いた寄稿者の割合が高いのではないか。 」という文章の後に、「極端なことを言えば、(特に英語版との) 民度の差を感じることすらある。」というような一文を最初は付け加えていた。自分のコラムではなく会社のコラムなのだから少々言い過ぎかなとも思い直し、原稿を提出する前に削除していた。
とはいえ、持つべき自覚を欠いた者によって記事が荒らされたり不適切な改変がなされたりしてしまっては、優秀な寄稿者ほど失望して、寄稿をやめるかあるいは英語版に移ってしまうだろう。閲覧者も然りである。それはまさに、民度の差の拡大である。それがグローバリゼーションの帰結なのだとしたら、いささか悲しい。
「『そういう文句を言うなら、あなた自身が寄稿したらどうか』と、時々自問することがある。」 とコラムでは書いた。政治や歴史についての記事はなかなか書けないが、IT関連なら寄稿できる。しかし、業務に直結する記事を寄稿してしまうと後々著作権を巡って面倒なことになるということもコラムで書いた。ただしそれは多少言い訳じみており、ボランティアの寄稿にそこまでエネルギーを注ぎ込めないというのが正直なところである。結局のところ、自問への答えを見いだせないでいる。
(注) 住基ネット (住民基本台帳ネットワークシステム) 自体の是非については、この記事では何も言及していないことにご留意ください。
仕事半分、趣味半分で、文字コードに関する次の二つのメーリングリストに登録している。それぞれにおいて、回数はごくわずかだが発言したこともある。
Legacy-Encoding-talk-ja においては、Windows の機種依存文字を扱えるように ISO-2022-JP を独自拡張した符号化方式 (ISO-2022-JP-MS) をミラクル・リナックス (森山将之さん) が提案している。それに対し、NTTの風間一洋さんは、既存の文字集合にあらたな符号化方式を今から独自に作り出すのは有害無益であり、白紙に戻すべきだと主張している。
今でさえ,レガシーエンコーディングが山のように有ります.それらを使わざるをえないケースというのはあるでしょう.しかし,今更,それらと違う新しいレガシーエンコーディングを作っても,どちらにせよ完全に解決できない問題を,さらに複雑化するだけでしょう.
また,新しいことは,できる限り国際的にやるべきであって,局地的にやるべきではないと思います.局地的にゲリラ的にやるのは,ソフトウェアの世界に対するテロでしかないと思います.としたら,今はISO/IEC 10646に対しておこなうしかない.
風間一洋, "[LE-talk-ja 100] Re: ISO-2022-JP-MS について", 2006年4月30日
このように、NTT の風間さんは「ゲリラ的」「テロ」といった厳しい表現を使って批判している。主張の内容自体は正しいと思うものの、iモード (NTTドコモ) の絵文字などのほうが、あえて言うならば別の意味で「局地的」「ゲリラ的」「テロ」だったのでは?(笑) と意地悪な突っ込みを入れたくなるほどに、言葉が過ぎている印象も受ける。念のため繰り返すが、主張の内容自体は正しいと思う。風間さんの2006年3月17日のブログ記事では、もっと穏やかな表現を用いた同様の主張が展開されており、JIS X 0213 対応を意識する重要性にも言及されている。
さて、もう一方のML (XMLと文字メーリングリスト) では、ミラクル・リナックスCTOの吉岡弘隆さんが、住基ネット (住民基本台帳ネットワークシステム) の「統一文字仕様書」という文書の入手方法を誰かご存じないかと質問していた。それについての情報をまとめると、おおよそ以下のようになる。
要するに、文字コードを盾に取った参入障壁が、住基ネットを元にして (住基ネットの外でも) 築かれている。住基ネットの文字コードが情報非公開で、Unicode の漢字以外の領域に勝手な外字追加を実施しているらしいということは、加藤弘一さんの「ほら貝」の「文字コードから見た住基ネットの問題点」という記事でうかがい知ってはいた。あらためて検索してみると、testnodaさんという方のブログ記事「統一文字コード」にも同様のことが記されている。どうやら確かな話らしいが、本当にそうなのか私には確認できない。言うまでもないが、私が悪いのではない。
吉岡さんは以下のようにやりきれなさを表明している。
やはりそうですか?
できない事情があるんでしょうね。うーん。
いろいろ大人の事情はあるかと思うのですが、
見えない参入障壁があるというのはフェアじゃない
ですよね。
なんか秘孔をついてしまったのかもしれない。
国または地方公共団体へのオープンソースソフトウェアの導入
推進という意味で、非公開の資料があるという現状は制度的に
導入を阻害している要因だという風に認識いたしました。
まったくその通りである。
吉岡さんは2006年3月17日のブログ記事やMLにおいて、動くコードをとにもかくにも実装して世に問うオープンソースの「バザールモデル」の利点を、厳密だが時間のかかる公的標準の制定プロセスと対比して主張している。それらの優劣はさておき、バザールモデルにせよ、公的標準にせよ、公開性 (情報や権利を公開し新規参入を妨げない性質) を指向している点では共通しているはずだ。住基ネットの「統一文字仕様書」が非公開であることは、バザールモデルか公的標準かという議論以前の問題である。
住基ネットの活用が拡大し、他のシステムと連携する場面が増加すれば、こうした参入障壁の弊害も拡大し、仕様の公開を要求する声も増加することになる。そして、「統一文字仕様書」への準拠を多くのソフトウェアが求められるような状況となったら、その内容次第では、「ソフトウェアの世界に対するテロ」というような事態に陥ってしまう恐れがある (・・・やはり言葉が過ぎている?)。本当にそうなのか私には確認できない。言うまでもないが、私が悪いのではない。
何年か前に、中国のオンライン書店の一つである新华书店 (四川省の新華書店) で何冊かIT関連の書籍 (英語→中国語の翻訳本) を購入したことがあった。
中国語の勉強という目的以外に、英語の原書と比べて格安だというのも魅力であった。数千円 (数十ドル) するはずの専門書が、数百円 (数十元) 程度で買えてしまう (送料なども考慮しなければならないが、これについては後述)。なかには英文のまま廉価で再出版されているのもある。こんな状況を知ってしまっては、やたら高い日本語の翻訳本を買うのがもったいなく感じてしまう。お金の損失、そして、語学の学習機会の損失 (、と言いつつ、時間や労力の節約という言い訳に多くの場合屈してしまうのだが)。
その新华书店 (四川省の新華書店) で購入した時には、なるべく早く欲しかったので、かなり割り増しだったが航空便の送料を支払い注文した。成都 (四川省の省都) と東京とは週に数便の旅客機の往来もあるし、遅くとも1週間待てば着くだろうと思っていた。だが着いたのは3週間後だった。ラベルを見ると、船便になっていた (苦笑)。うーむ。
ところで送料はいくらだったのだろうか?思い出せない。せっかくだから、あらためて一通りのネット書店を調べてみることにした。以前から買いたいと思っていてまだ買っていない英語の原書「Robert Love, "Linux Kernel Development (2nd Edition)", Novell Press, 2005.」とその中国内出版「Linux内核设计与实现(第二版),机械工业出版社」(英語版および中国語版) を対象とした。もちろん配送先は日本とし、価格、料金は現時点のものである。
ネット書店 | 国・通貨 | 書籍価格 (一般会員) |
日本への送料 | 送料の規定など |
---|---|---|---|---|
Amazon.com | 米国 米ドル |
(原書) 28.34 |
(航空便) 28.98 (船便) 11.48 |
国別に規定あり 航空便 (2~4営業日) は (21.99 + 6.99×冊数)ドル 船便 (13~20営業日) は (6.99 + 4.49×冊数)ドル 船便の料金割増速達もあり |
Amazon.co.jp | 日本 円 |
(原書) 5601 |
0 | 1500円以上は国内送料無料 |
卓越网 (卓越網) Amazon.com傘下 |
中国 人民元 |
(英語) 32.00 (中国語) 32.30 |
(航空便) 170.00 (船便) 60.00 |
各国を5段階に分けた規定あり 航空便 (2~3日) は (100.00 + 70.00×冊数)元 船便 (10~20日) は (60.00×冊数)元 |
当当网 (当当書店) |
中国 人民元 |
(英語) 31.20 (中国語) 29.60 |
(航空便) 100.00 (船便) 50.00 |
航空便 (4~10日) は価格の120%、ただし100元が下限 船便 (4~8週間) は価格の50%、ただし50元が下限 メール送金 (PayPal) 利用可 |
华储网 (華儲網上電脳書店) |
中国 人民元 |
(英語) 32.00 (中国語) 30.40 |
英語版の場合 (航空便) 96.00 (船便) 19.20 |
航空便 (15日前後) は価格の300% 船便 (1~2ヶ月) は価格の60% ウエスタンユニオン国際送金 (スルガ銀行) を利用可 |
中国图书网 (中国図書) |
中国 人民元 |
(英語) 34.00 (中国語) 32.30 |
(航空便) 100.00 |
海外向けは航空便 (EMS、アジアへ5日以内) のみ 価格の180%、ただし100元が下限 |
蔚蓝网络书店 (蔚藍網絡書店) |
中国 人民元 |
(英語) 32.00 (中国語) 30.40 |
(航空便) 180.00 |
海外向けは航空便 (EMS、3~5営業日) のみ 価格25元までは送料115元 価格25元を超える場合は25元毎に送料25元 さらに40元を加算 (なぜ?) |
(3月21日、30日訂正) いくつかの中国のオンライン書店サイトにおいてクレジットカード利用不可としていたが、電子決済サービス (首信易支付、YeePay易宝、环迅IPSなどのいずれか) 経由ですべて利用できるため、表中の記述を訂正した。以下の文章についてもそれに合わせて変更した。
以下いくつか補足する。現在の為替レート (仲値) は、1米ドル=116円、1人民元=15円程度である。利用するクレジットカードや電子決済サービスによっては為替手数料などが異なる場合があるため留意する必要がある。到着までの期間はそれぞれのサイトの記載をそのまま記した。国や地域を限定していない場合にはかなりの誤差があると思われる。
IT関連書籍を一冊だけ買うなら华储网 (華儲網上電脳書店) が良さそうで、特に船便の安さは魅力的である。一度試しに買ってみようかと思う。ただし、何冊かまとめ買いしてしまうと、後述する当当网 (当当書店) よりも送料が高くつくことになる。(3月30日一部削除:「中国の電子決済サービスというものを利用したことがなく 、その点が不安」と記していましたが、新华书店で利用していました。)
総合評価としては、この分野ではたしか老舗だったはずの当当网 (当当書店) が一番良さそうである。Googleで「书店 (書店)」をキーワードに検索しても一番目に表示される。中国の銀行口座を持っている人にも選ばれそうな様相である。ただし、返金でトラブったという「ユビュ王の食卓」さんという方のブログ報告も存在するので、やはり実際に試して確認する必要がある。
比較表に新华书店 (四川省の新華書店) を取り上げようかと思ったのだが、英語版を取り扱っておらず、どうも (IT関連では) 品揃えがもうひとつであった (あるいは商品検索エンジンに問題があるかもしれない)。また、送料が明示されておらず、代わりに以下のように記されていた。
运输费用的计算
如果您一次购买多个商品属于同一个商家(公司)里,将只计算一张订单的运输费用;而如果您一次购买多个商品属于多个商家(公司),将按照各个订单的运输费用分别计算。
运费标准是各个商家自己制定和发布的标准执行的,您在购买该商家的商品时,注意比较其运费的收费标准。
(新华书店「运输说明」)
つまり送料が出版社によって異なるということらしい。不可解である。ここもたしか老舗だったはずでGoogle検索の上位にはランクされるのだが、昔から不可解である。
それはともかく、中国のネット書店では、書籍に限らずCDやDVDも相当に割安であり、上手に利用すればかなりお得である、はずである。また不可解な経験をしたら、ここで報告しようと思う (苦笑)。
普段は Web ブラウザとして Firefox を使っている。Firefox では UTF-8 の Web ページに中国語の簡体字が混じっていても、文字化けせずに表示される。しかし Internet Explorer では文字化けしてしまった。span タグを挿入し、lang 属性を zh に指定して、以下再テスト。
你们好。我叫小川创生。 (lang="zh" と指定)
你们好。我叫小川创生。 (xml:lang="zh" と指定)
你们好。我叫小川创生。 (lang 指定無し)
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