2012年4月30日

東京からの東海道新幹線の乗車券で、菊名⇔新横浜に乗車できるのか?

長らくブログを更新していなかったが、手始めに少々身近なネタから久しぶりに投稿。(そう身近でもないかな?)

近々、広島に旅行しようと思い、都内某駅のみどりの窓口に切符を買いに行った。新幹線の指定席は自動券売機で購入できたが、宮島まで乗車券を買いたかったので、有人の窓口に並んだ。(宮島口駅は広島市内ではないので、新幹線の切符と一緒に自動券売機では買えない。広島駅で途中下車するにはむしろ好都合なのだが。)

受付の若い女性のJR職員に、乗車券について、「経路は新幹線でいいですか?」と聞かれた。すでに新幹線の切符を買っていることを伝えた。しかし、東京からではなく、菊名(東急東横線と接続)から乗って新横浜で新幹線に乗り換えるかもしれないけど、もしかして追加運賃が必要ですか?と尋ねると、彼女の顔色は曇った。

なぜか、時刻表の路線図のページを確認し始め、「・・・あ、菊名から、乗れます。乗れます。」という返事が。

彼女は何を確認していたのだろうか?気になって調べてみた。

・・・なかなか、深かった(苦笑)。以下、JR東日本の旅客営業規則を追っかける形で整理する。

①原則として、東海道新幹線と、並行する在来線(東海道本線)は、同一の線路として扱う。(第16条の2第1項)

②ただし、新横浜駅(新幹線)と横浜駅(在来線)は離れているため、品川~(新横浜 or 横浜)~小田原間の駅(両端の品川と小田原は除く)で発着または接続する場合は、新幹線と在来線を異なる線路として扱う。(第16条の2第2項(1))

③しかしそれでは、新横浜で乗り換えて新幹線を利用しようとすると、乗車券の買い方が複雑になり、ともすれば追加の運賃が必要となってしまう。そうした乗客をある程度救済するために、「選択乗車」という、複数の経路のいずれかを選択できる特別ルールがある。(第157条第1項)

④新横浜にからむ選択乗車の規定は三つあり(第157条第1項(23)(24)(25))、このうち、(25)により、
・東神奈川~(在来線:横浜線)~新横浜~(東海道新幹線)~小田原
・東神奈川~(在来線:東海道本線)~横浜~(在来線:東海道本線)~小田原
のいずれかの経路の乗車券で、もう一方の経路も乗車できる。ただし、乗車券の買い方として、新幹線経由ではなく、在来線経由を指定して乗車券を買う必要はある(運賃は同じだが乗車券の券面には区別して表示される)。品川~小田原について新幹線経由となる乗車券だと、東神奈川は通らないことになり、この(25)の規定では救済されない。なお、在来線(東海道本線)経由の乗車券でも、新横浜で乗り換えずに品川~小田原の新幹線に乗車することは可能(上記①により)。

⑤菊名は東神奈川~(在来線:横浜線)~新横浜の間にあるため、上記④の選択乗車の規定により、東京都区内⇔宮島口の在来線(東海道本線)経由の乗車券でも、菊名⇔新横浜は乗車可能となる。(宮島口や広島市内に限らず、小田原以遠ならば、たとえば名古屋市内や大阪市内でも同様。また、菊名に限らず、東京都区内~東神奈川~新横浜の間にある神奈川県の駅ならば同様。)

めでたしめでたし。

おそらくそのJR職員は、その規定は知っていたけれども、とっさには確信が持てなかったのだろう。おそらく、菊名が新横浜と東神奈川の間にあるのか等について、規定を思い出しながら路線図を確認していたのだろう。

なるほど、と、ここまで調べてようやく合点がいった。

なお、結局その場では乗車券を買わなかった。横浜市内からの乗車券のほうが安いし、乗車当日でも乗車券を買えますが、と言われ、それもそうだなと。そもそも横浜市内からの乗車券ならば、文句なく菊名⇔新横浜は乗車可能だし。いつもながら、余計な遠回りをしてしまった。ああ、疲れた。(苦笑)

2009年5月10日

横浜・開国博Y150「入場者数」のハッタリぶり

ゴールデンウィーク(4月28日~5月6日)期間中の入場見込みを約40万人と発表していた横浜・開国博Y150。しかし5月7日の記者会見で、その数字は無料会場の入場者も含めたものだと翻し、関係者は謝罪したらしい。

 ◇40万人見込み“訂正” 協会「無料を含む数だった」

 横浜開港150周年イベント「開国博Y150」を主催する横浜開港150周年協会は7日、大型連休中(4月28日~5月6日)の有料入場者数を約 11万人と発表した。開幕前は4倍近い「約40万人」を見込み数として公表していたが、協会は発表後に「約40万人は無料会場も合わせた『全体』の見込み 数の誤りだった」と訂正した。

 協会は、会期中の有料入場者数を約500万人と掲げている。会期当初で目標を事実上下方修正したとも受け取れる「訂正」について、協会は「このタイミングでは勘ぐられても仕方ない。大変申し訳ない」と謝罪した。

 発表では、大型連休中の入場者数は「全体」で約49万人で、このうち「有料」は約11万人だった。協会の阿部龍浩広報・宣伝部統括部長によると、 これらの人数は協会運営本部が算出する。「約40万人」について運営本部から詳しい説明がなく、広報・宣伝部は有料入場者見込みと思い込み公表したとい う。

 阿部部長は「協会内部の情報の伝達ミスが原因。7日になって初めて誤りに気付いた」と弁明。「約40万人」の見込み数は複数のメディアが報道したが、運営本部から誤りの指摘はなかったという。

「横浜開港150周年:開国博、GWの有料入場者11万人 /神奈川」(毎日新聞, 5月8日) より引用)

内輪で責任のなすりあいをしている様子が目に浮かぶ。

横浜開港150周年協会の公式サイトには、5月7日の記者発表資料「横浜開港150周年記念テーマイベント「開国博Y150」開幕〜ゴールデンウィーク(4/28〜5/6)入場者 約49万人」が一見高らかに掲載されているが、PDF資料の右下に「【有料会場入場者数】 累計 109,023人」と、目立たないように記されている。文書作成担当者の心情を鑑みると、むしろ気の毒に思えてくる。

入場者数に関する各報道と、GW後に主催者が発表した(無料を含む)入場者数を、時系列にまとめてみた。(下線強調は筆者による)

月日・時期 報道の内容 入場者数
(GW後に主催者発表)
開会前の見込み 「会期153日中に見込んでいる観客動員数は、ベイサイドエリア450万人、ヒルサイドエリア50万人で、合計500万人。ゴールデンウイーク期間中のベイサイドエリアの想定入場者数は約40万人。」(ヨコハマ経済新聞ほか) -
開会初日
4月28日(火)
「同日夕までに6000人以上が来場」(毎日新聞
午後四時時点の入場者数から、一日全体の数を予想する推計値で、横浜開港150周年協会は「一万人超」と発表した。協会の広報担当者は「ほぼ予想通り」とほっとした様子。」(東京新聞
「19,000人もの有料入場者数を記録」(横浜ウォーカー
(無料も合わせた全体)
19,000人
5月1日(金) 「1万6000人以上」(毎日新聞) ※4月28日と同様、夕方までの数字か (無料も合わせた全体)
23,000人
最多入場者数
5月3日(日祝)
(調べた範囲では該当記事なし) (無料も合わせた全体)
144,000人
GW期間
5月6日まで
「発表では、大型連休中の入場者数は「全体」で約49万人で、このうち「有料」は約11万人だった。」
「開幕前は4倍近い「約40万人」を見込み数として公表していたが、協会は発表後に「約40万人は無料会場も合わせた『全体』の見込み数の誤りだった」と訂正した。」(毎日新聞, 5月8日
(無料も合わせた全体)
491,000人
(有料入場者数)
109,023人

開国博Y150の無料会場には、赤レンガ倉庫や山下公園など、普段から多くの人でにぎわう場所が組み込まれている(公式サイトの案内図参照)。もちろんそれには、地域全体で開国150周年のイベントを盛り上げようという趣旨があるのだろう。

しかし、すでに開会初日の段階で、入場者数発表の整合性は怪しくなっていることが分かる。夕方の段階の「一万人超」という推計値を「ほぼ予想通り」という広報担当者は一体どんな予想をしていたのか、ということになる。「午後四時時点」というようにリアルタイムで計測しているのは、さすがに有料会場限定だろう。さらに横浜ウォーカーは、19,000人という数字を「有料入場者数」とはっきり言ってしまっている。しかしその数字は、実は無料入場も合わせた数字だった。

そして、GW後の記者発表資料には、無料も合わせた「全体」の概数は日毎に記載する一方で、正確に数えられるはずの有料入場者数については累計しか発表していない。普通は逆ではないか?

このGW期間中、私も一観光客として、その「無料会場」なる赤レンガ倉庫と山下公園に出向いていた。有料会場(大人2,400円)は高すぎると思ったので入場しなかった。赤レンガ倉庫内のショップを見て回り、山下公園まで歩いて一服し、中華街で食事した後でまた赤レンガ倉庫の近くに戻って遊覧船に乗ったのだが(つまり普通の横浜観光)、そんな私をどうやって主催者は数えたのだろうか。かりに何らかの方法でちゃんと数えていたとしても、私は開国博に「入場」したという認識をまるで持っていないのだが。

こんなのはデタラメか、好意的に解釈しても、相当にいい加減な発表、広報である。

こうしたいい加減さが、行楽地の警備体制に影響を与えた可能性もある。毎年GW前に、主催者からの情報をもとに警察が人出の予想を発表している。各報道によると今年は以下のような感じだった。

みなとみらい地区(横浜市西区) 122万人
横浜八景島シーパラダイス(横浜市金沢区) 52万人
野毛大道芸(横浜市中区) 50万人
泳げ鯉のぼり相模川(相模原市) 47万人
開国博Y150(横浜市中区) 40万人
ザよこはまパレード(横浜市中区) 30万人

(神奈川県警が4月22日に発表した県内の人出予想(4月25日~5月6日)より上位6か所を引用)

冒頭の引用記事では、この40万人という数字を「広報・宣伝部は有料入場者見込みと思い込み公表した」とのことだから、神奈川県警にも誤った情報を提供したということになる。訂正について謝罪するなら、警察にも一言あるべきだろう。

ただし、開国博Y150側の40万人を、無料会場を含む数字だと訂正したら、みなとみらい地区と重複して人出を計上していることになる。赤レンガ倉庫は「一般社団法人横浜みなとみらい21」のサイトにも当然のように掲載されている(山下公園はみなとみらい地区に含めないそうだ)。どちらにせよ、主催者は過剰な人出予想を警察へ提供したことになる。

赤レンガ倉庫はもともと人気の高い観光スポットで、年間約500万人が訪れるそうだ(一般社団法人横浜みなとみらい21のサイトより)。単純に日数で割り算しても、9日間では12~13万人の人出となる。まして4月28日~5月6日の9日間では、開国博を開催せずとも人出は急増するだろう。山下公園もやはりお馴染みの観光&デートスポットで、こちらは年間約200万人が訪れるそうだ(横浜山下公園通り会のサイトより)

赤レンガ倉庫と山下公園だけで、GW期間中に40万人という目標におよそ手が届いてしまうのではないか。もしも無料会場を含む数字だったのだとしたら、見込み(目標)設定が低すぎるのでは?

というか、「約40万人は無料会場も合わせた『全体』の見込み数の誤りだった」だなんて、その場を取り繕うための嘘でしょう?

主催者の訂正後も、9月までの会期153日間の有料入場者数(ベイサイドエリアのみ)450万人という見込みは変更ないらしい。1日平均で約3万人ということだから、9日間では単純計算で約27万人。この手の期間限定ベントは夏休みから閉会間際(8~9月)に入場者数が急増するのが通例とはいえ、有料入場者数の見込みとしてならば、GW期間中に40万人という数字はすんなり合点がいく。

姑息な訂正で「約49万人」「首都圏随一の盛大なイベントとして順調な滑り出し」などとハッタリをかまし、記者会見で突っ込まれて「このタイミングでは(目標の下方修正と)勘ぐられても仕方ない」などと情けない謝罪をするよりも、なぜ観光客にそっぽを向かれているのか、今からでも率直に認識して対策してもらいたい。図らずも「入場者数」にカウントされてしまった一観光客からの願いである。

2007年10月 6日

北海道の道道で見かけた道路標識について問い合わせてみたら・・・

先週、3泊4日の日程で北海道へ一人旅し、レンタカーを借りてあちこち観光していた。その際に、屈斜路湖から阿寒湖に向かう途中の、 道道588号線、網走郡津別町のおそらく上里付近で、それまで見たことのない道路標識に出くわした。

この標識は、この付近に数十メートル間隔で連続して数十か所設置されていた。最初は何の標識なのかさっぱり分からなかったが、この付近には道路を横切る方向にひび割れが多数あった (写真にもかすかに1本写っている)。 多いところでは10メートルか20メートルくらいの間隔でひび割れがあり、ひび割れを通過するたびに車がガタンゴトンと軽く揺れるという状況だった。そうした現場の状況から見て、おそらくこの標識はひび割れを注意しているのだと思っていた。

北海道から帰ってきて、もちろん旅行なのでいろいろ印象に残ることはあるし、こんなことがあったと聞いて欲しいこともいろいろある。撮った写真を見ながら旅路を振り返り、しばし感慨にふける日々が続いていた。そんななか、この標識がどういうものなのか、どうにも引っかかって仕方なかったのは、ひとえに私の性格によるものである。

インターネット上で調べようとしたが、それらしい情報をまったく見つけられなかった。「道路標識 ひび割れ」とか、「津別町 ひび割れ」とか、「道道588号 道路標識 ひび割れ」とか、いろいろキーワードを変えて検索したがだめだった。単なる不勉強なのかとも思い、国土交通省道路局のサイトにある道路標識紹介ページも閲覧してみたが、やはりなかった。

ただ、調べているうちに、道路標識についての意見や要望を受け付ける窓口が各都道府県の警察にあることを知った。平成元年 (1989年) から国の指示によってそうしているらしく、北海道警の Web サイトにも道路標識意見箱が用意されていた。

ものは試しと思い、当該の標識について、標識の意味などを明確にして欲しいといった要望の形で Web サイトから質問してみた。原則としてメールでは回答しないとのことだったが、こちらの氏名、住所、電話番号、メールアドレスはすべて記載した上で、もし回答いただけるならメールでいただきたいと付記しておいた。

質問の翌日に、北海道建設部土木局道路課の方から、ていねいな回答をメールでいただいた。道道についての問い合わせは、北海道警からそちらに転送、受理されるそうだ。で、その回答というのが、私の想像を超えるものだった。

「防護柵(ガードケーブル等)の有る区間を示す除雪標識」・・・えっ?

四国出身で東京暮らしの私に、その発想はまったくなかった。除雪する際に雪に隠れて見えない障害物の存在を知らせるための標識なのだそうだ。というか、防護柵なんてあったかなあ?少なくとも冒頭に掲載した写真には写っていない。かつてはあったが撤去されたのか、あるいは、道路の脇にある溝の存在を知らせるために標識を代替しているのかもしれない。

道路課の方の回答はたいへん親切で、日本道路協会という社団法人の「道路維持修繕要綱」という書籍の当該部分をスキャンして、参考資料として添付していただいた。同じような除雪標識は他にも数種類あるそうだ。また、ひび割れについては、北海道の道路関係の予算がかなり厳しい状態であることなどを詫びていた。いたく恐縮してしまった。

「これに懲りず是非、また北海道にお越し下さることを願ってます。」と回答は締めくくられていた。ひび割れに懲りるどころか、またすぐにでも北海道に旅行したい気分だ。回答してくださった道路課の方に限らず、北海道の方々は観光客の私に対してみな親切だった。特に、午後7時を過ぎて網走の土産物屋がどこも閉まっている時にニポポ人形を探し回っていた私に、「網走湖荘 (ホテル) の土産物売り場ならまだ開いているかも」と教えてくれた網走駅のキオスクのおばさん、ビンゴでした。どうもありがとう。慌てて運転せず、交通事故を起こさないように、とまで気遣ってくださった。

・・・ようやく旅行記らしい記述が始まったが、続きはまた今度ということで。(笑)

2006年12月31日

JAL株主優待券で私は得をしたのか?

この正月は二日ほどだけ、主に中学の同窓会に出席する目的で東京から徳島に帰省する。今回は片道だけ飛行機の予約を取った。その際に、JAL (日本航空) の株主優待券なるものを初めて金券ショップで1枚購入した。

なぜ今回が初めてかというと、最近の航空運賃の上昇に加えて、以下の報道を目にしたからだった。

 東京、大阪の金券ショップで大手航空会社の株主優待券が暴落している。大阪では、1年前に9000~1万2000円だった日本航空の優待券が3000円台に急落。東京都内でも5000~6000円の安値だ。年末年始の最需要期の値崩れは異例。背景には、日航が7月に実施した大型増資があるようだ。

 優待券は1枚で、国内の片道航空券を普通運賃の半額で購入できる。金券ショップで日航の優待券を3300円で買えば、東京―大阪便は通常料金2万2100円のところ、片道1万4550円(1月8日までの繁忙期料金)で乗れる。7550円得する計算だ。

 日航の優待券が値崩れを始めたのは12月に入ってから。日航が約1470億円の大型増資を実施したため、大量の優待券が11月下旬から新たな株主に配布され、需給バランスが崩れた。グループ事業会社統合の記念優待券も同時に発行され「発行枚数は前年同期の約1.4倍に増えた」(日航)という。

朝日新聞(asahi.com), 「航空優待券暴落、金券ショップで半額に 日航増資影響か」, 2006年12月28日 より引用

東京-徳島便 (この区間は現在JALのみの運行で、スカイマークは今年4月に撤退してしまった) で計算してみる。片道の普通運賃は28600円 (1月8日までの繁忙期料金、羽田空港の旅客施設使用料100円を含む) で、半額なら14350円となる。今回は利用予定が間際だったので、近くにある少々割高な大手チェーン店 (大黒屋の池袋店) にて株主優待券を6000円で購入したものの、それでも総計20350円となり、8250円も得する計算となる。さらに、Yahoo!オークションで「JAL 株主優待」をキーワードにして検索してみると、だいたい大阪と同じ3000円台が相場であることが分かる。東京に在住していても、東京-徳島の片道費用を10000円以上節約できそうである。(この段落2007年1月3日修正: 羽田空港の旅客施設使用料は割引の対象外でした)

私が大学に入学し上京した頃は、この区間の普通運賃は21000円程度だった (当時は日本エアシステム (JAS))。その後、全日空 (ANA) の参入・撤退、スカイマークの参入・撤退などがあったなか、普通運賃はじりじりと値上がりした。早割や特定便割引などを航空会社はアピールしているが、予約の時期や販売座席数には限りがある (たしか以前に公正取引委員会から注意されたこともあるはず)。なにより正月などの繁忙期にはそんな割引は存在せず、むしろ「ピーク期」として割増となる。さらに、2007年4月から、また値上げするとのことである。東京-徳島便は600円値上がりし、繁忙期は 29200円 (羽田空港の旅客施設使用料100円を含む) となるそうだ。

そこへきて、今回のJAL株主優待券の価格急落である。以前は東京-徳島便で株主優待券を買ってもさほどのうまみはなかったが、今は違う。しかも、株主優待券による航空券の購入は、前払いではなく、搭乗時に空港で行える。むしろ空港で支払うのが一般的なはずで、2005年7月から自動チェックイン・発券機で株主優待券が利用可能になったことを、「お客さまの声を形にしました」としてJALはアピールしている。予約を変更する自由まで考慮すれば、これはもう、繁忙期以外でも迷わず金券ショップで株主優待券を買い求めたほうが良さそうな情勢である。

なお、株主優待券の販売価格だけでなく、買取価格も当然急落しているようだ。金券ショップの買取価格表やブログ記事によると、以前は4000~5000円程度だった買取価格が、今では2000円前後になっているようである (こうした状況は ANA でも同様らしく、販売価格、買取価格とも JAL につられて「連れ安」状態なのだそうだ)。Tom さんという方のブログ記事 からもうかがえるように、まとめて何枚か売却する株主は、報道される前から価格の下落を認識し、金券ショップごとの価格差に敏感になっているようである。

前掲の記事にあるように、今年7月のJALの大型増資によって11月に株主優待券が大量発行されたのが原因らしい。その増資と言えば、株主総会のわずか二日後に発表したという、あの増資である。それについてはあちこちで論評されているのでここでは詳しく書かないが、おさらいとして、増資の直後に亡くなった社外監査役の故・西村正雄さんのインタビュー記事 (日経ビジネス オンライン) が参考になるのでリンクを張って紹介しておく。

さて、株価のみならず株主優待券の価格も下落して、既存のJAL株主が損をしたのは誰の目にも明らかである。薄利となってしまった金券ショップも損をしただろう。一方で、増資後の新規の株主のうち、株主優待券を目当てにしている人は、安値で株を購入できて、得をしているのかもしれない。

JALはどうだろうか。経営が苦しいからこそ値上げをしているところへきて、株主優待券による半額の利用者が急増する。株主優待券の発行基準によると、小口の株主ならおよそ1000株につき年間1枚、大口ならおよそ2000株につき年間1枚とのことである。先の増資の規模は7億株 (約1470億円) であるから、株主優待券はおよそ年間35万~70万枚増加したことになる。控えめな仮定として、1枚あたり東京-大阪便と同程度の割引 (約11000円分) が適用されたとすると、およそ年間40億~80億円ほど運賃収入が減少する。増資によって得られた資金を、早ければ20年足らずで使い切ることになる。たいした問題でなければいいのだが。

では利用者 (たとえば私) にとってはどうなのだろうか?一見得をしたようであるが、スカイマークが撤退し、そのうえ元々の運賃の値上げが続いているなかでのことであるから、割引いて考える必要がある。しかしそれより大事なのは、やはり、JALの経営悪化によって安全対策が後退する危険性だろう。少々の節約なんぞより、命あっての物種である。とんでもない損をそのうち掴まされるのではないか?そんな考えを巡らせながら、私は明日の2007年元旦、羽田空港の搭乗口に向かう。頼むから墜落しないでくれ (苦笑)。少々物騒な締めくくりだが、皆さんよいお年を。

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ブログ人登録 2008年03月15日