ゴールデンウィーク(4月28日~5月6日)期間中の入場見込みを約40万人と発表していた横浜・開国博Y150。しかし5月7日の記者会見で、その数字は無料会場の入場者も含めたものだと翻し、関係者は謝罪したらしい。
◇40万人見込み“訂正” 協会「無料を含む数だった」
横浜開港150周年イベント「開国博Y150」を主催する横浜開港150周年協会は7日、大型連休中(4月28日~5月6日)の有料入場者数を約 11万人と発表した。開幕前は4倍近い「約40万人」を見込み数として公表していたが、協会は発表後に「約40万人は無料会場も合わせた『全体』の見込み
数の誤りだった」と訂正した。
協会は、会期中の有料入場者数を約500万人と掲げている。会期当初で目標を事実上下方修正したとも受け取れる「訂正」について、協会は「このタイミングでは勘ぐられても仕方ない。大変申し訳ない」と謝罪した。
発表では、大型連休中の入場者数は「全体」で約49万人で、このうち「有料」は約11万人だった。協会の阿部龍浩広報・宣伝部統括部長によると、 これらの人数は協会運営本部が算出する。「約40万人」について運営本部から詳しい説明がなく、広報・宣伝部は有料入場者見込みと思い込み公表したとい
う。
阿部部長は「協会内部の情報の伝達ミスが原因。7日になって初めて誤りに気付いた」と弁明。「約40万人」の見込み数は複数のメディアが報道したが、運営本部から誤りの指摘はなかったという。
(「横浜開港150周年:開国博、GWの有料入場者11万人 /神奈川」(毎日新聞, 5月8日) より引用)
内輪で責任のなすりあいをしている様子が目に浮かぶ。
横浜開港150周年協会の公式サイトには、5月7日の記者発表資料「横浜開港150周年記念テーマイベント「開国博Y150」開幕〜ゴールデンウィーク(4/28〜5/6)入場者 約49万人」が一見高らかに掲載されているが、PDF資料の右下に「【有料会場入場者数】 累計 109,023人」と、目立たないように記されている。文書作成担当者の心情を鑑みると、むしろ気の毒に思えてくる。
入場者数に関する各報道と、GW後に主催者が発表した(無料を含む)入場者数を、時系列にまとめてみた。(下線強調は筆者による)
月日・時期 |
報道の内容 |
入場者数
(GW後に主催者発表) |
開会前の見込み |
「会期153日中に見込んでいる観客動員数は、ベイサイドエリア450万人、ヒルサイドエリア50万人で、合計500万人。ゴールデンウイーク期間中のベイサイドエリアの想定入場者数は約40万人。」(ヨコハマ経済新聞ほか) |
- |
開会初日
4月28日(火) |
「同日夕までに6000人以上が来場」(毎日新聞)
「午後四時時点の入場者数から、一日全体の数を予想する推計値で、横浜開港150周年協会は「一万人超」と発表した。協会の広報担当者は「ほぼ予想通り」とほっとした様子。」(東京新聞)
「19,000人もの有料入場者数を記録」(横浜ウォーカー) |
(無料も合わせた全体)
19,000人 |
5月1日(金) |
「1万6000人以上」(毎日新聞) ※4月28日と同様、夕方までの数字か |
(無料も合わせた全体)
23,000人 |
最多入場者数
5月3日(日祝) |
(調べた範囲では該当記事なし) |
(無料も合わせた全体)
144,000人 |
GW期間
5月6日まで |
「発表では、大型連休中の入場者数は「全体」で約49万人で、このうち「有料」は約11万人だった。」
「開幕前は4倍近い「約40万人」を見込み数として公表していたが、協会は発表後に「約40万人は無料会場も合わせた『全体』の見込み数の誤りだった」と訂正した。」(毎日新聞, 5月8日) |
(無料も合わせた全体)
491,000人
(有料入場者数)
109,023人 |
開国博Y150の無料会場には、赤レンガ倉庫や山下公園など、普段から多くの人でにぎわう場所が組み込まれている(公式サイトの案内図参照)。もちろんそれには、地域全体で開国150周年のイベントを盛り上げようという趣旨があるのだろう。
しかし、すでに開会初日の段階で、入場者数発表の整合性は怪しくなっていることが分かる。夕方の段階の「一万人超」という推計値を「ほぼ予想通り」という広報担当者は一体どんな予想をしていたのか、ということになる。「午後四時時点」というようにリアルタイムで計測しているのは、さすがに有料会場限定だろう。さらに横浜ウォーカーは、19,000人という数字を「有料入場者数」とはっきり言ってしまっている。しかしその数字は、実は無料入場も合わせた数字だった。
そして、GW後の記者発表資料には、無料も合わせた「全体」の概数は日毎に記載する一方で、正確に数えられるはずの有料入場者数については累計しか発表していない。普通は逆ではないか?
このGW期間中、私も一観光客として、その「無料会場」なる赤レンガ倉庫と山下公園に出向いていた。有料会場(大人2,400円)は高すぎると思ったので入場しなかった。赤レンガ倉庫内のショップを見て回り、山下公園まで歩いて一服し、中華街で食事した後でまた赤レンガ倉庫の近くに戻って遊覧船に乗ったのだが(つまり普通の横浜観光)、そんな私をどうやって主催者は数えたのだろうか。かりに何らかの方法でちゃんと数えていたとしても、私は開国博に「入場」したという認識をまるで持っていないのだが。
こんなのはデタラメか、好意的に解釈しても、相当にいい加減な発表、広報である。
こうしたいい加減さが、行楽地の警備体制に影響を与えた可能性もある。毎年GW前に、主催者からの情報をもとに警察が人出の予想を発表している。各報道によると今年は以下のような感じだった。
みなとみらい地区(横浜市西区) 122万人
横浜八景島シーパラダイス(横浜市金沢区) 52万人
野毛大道芸(横浜市中区) 50万人
泳げ鯉のぼり相模川(相模原市) 47万人
開国博Y150(横浜市中区) 40万人
ザよこはまパレード(横浜市中区) 30万人
(神奈川県警が4月22日に発表した県内の人出予想(4月25日~5月6日)より上位6か所を引用)
冒頭の引用記事では、この40万人という数字を「広報・宣伝部は有料入場者見込みと思い込み公表した」とのことだから、神奈川県警にも誤った情報を提供したということになる。訂正について謝罪するなら、警察にも一言あるべきだろう。
ただし、開国博Y150側の40万人を、無料会場を含む数字だと訂正したら、みなとみらい地区と重複して人出を計上していることになる。赤レンガ倉庫は「一般社団法人横浜みなとみらい21」のサイトにも当然のように掲載されている(山下公園はみなとみらい地区に含めないそうだ)。どちらにせよ、主催者は過剰な人出予想を警察へ提供したことになる。
赤レンガ倉庫はもともと人気の高い観光スポットで、年間約500万人が訪れるそうだ(一般社団法人横浜みなとみらい21のサイトより)。単純に日数で割り算しても、9日間では12~13万人の人出となる。まして4月28日~5月6日の9日間では、開国博を開催せずとも人出は急増するだろう。山下公園もやはりお馴染みの観光&デートスポットで、こちらは年間約200万人が訪れるそうだ(横浜山下公園通り会のサイトより)
赤レンガ倉庫と山下公園だけで、GW期間中に40万人という目標におよそ手が届いてしまうのではないか。もしも無料会場を含む数字だったのだとしたら、見込み(目標)設定が低すぎるのでは?
というか、「約40万人は無料会場も合わせた『全体』の見込み数の誤りだった」だなんて、その場を取り繕うための嘘でしょう?
主催者の訂正後も、9月までの会期153日間の有料入場者数(ベイサイドエリアのみ)450万人という見込みは変更ないらしい。1日平均で約3万人ということだから、9日間では単純計算で約27万人。この手の期間限定ベントは夏休みから閉会間際(8~9月)に入場者数が急増するのが通例とはいえ、有料入場者数の見込みとしてならば、GW期間中に40万人という数字はすんなり合点がいく。
姑息な訂正で「約49万人」「首都圏随一の盛大なイベントとして順調な滑り出し」などとハッタリをかまし、記者会見で突っ込まれて「このタイミングでは(目標の下方修正と)勘ぐられても仕方ない」などと情けない謝罪をするよりも、なぜ観光客にそっぽを向かれているのか、今からでも率直に認識して対策してもらいたい。図らずも「入場者数」にカウントされてしまった一観光客からの願いである。
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