Intelの「グリーンIT」バナー広告が電力を無駄遣い
最近、グリーンITという言葉がIT業界で注目され始めている。コンピュータシステムにおける電力消費が地球温暖化防止の観点から無視できないほど増加しているとされており、それを削減する努力が求められようとしている。ただし今のところは、商売上の明確なメリットがありそうなところはともかく、そうでないところはコストの問題もあって簡単には対応できないだろう。どのような対策がどの程度必要なのか、効果はあるのかといった検討や議論も含めて、とにかく啓蒙が始まったというところである。
詳しく知りたい人は、Googleで「グリーンIT」を検索してもトップに表示される日経ITProの「グリーンIT」をおすすめ・・・と言いたいところだが、そのトップページ上部に、なんとも悩ましいIntel(インテル)のバナー広告が表示される場合がある。(もしも表示されなければ何回かリロードするとそのうち現れる)
(日経ITPro「グリーンIT」を2008年1月2日閲覧、縮小して抜粋)
この広告はFlashのアニメーションである。3年ほど前に購入したノートPCのスペック(Windows XP SP2、Intel Celeron 2.7GHz、メモリ768MBへ増設)では不足しているのだろうか、アニメーションの一部(ジグソーパズルみたいな図形が高速で動く場面)がコマ送り状態となる。ページを表示したままにしていると、同じアニメーションがずっと繰り返される。そして、ただ表示しているだけで、冷却ファンの音が表示前よりもにぎやかになる。
WindowsのタスクマネージャでCPU使用率を確認してみた。バナー広告のアニメーションの繰り返しを、バナーを全部表示した状態で3周、次に、上半分をページ外にスクロールして下半分だけ表示した状態で2周させ、その後、バナー全部を非表示状態にした。(ページスクロールや他アプリケーションなどのCPU使用率への影響も多少ある。)普段使っているFirefoxだけでなく、Internet Explorer 6でも同様にテストしてみた。
(Firefox 2 で当該バナー広告を表示した際のCPU使用率(全部表示3周、下半分表示2周))
(Internet Explorer 6 で当該バナー広告を表示した際のCPU使用率(全部表示3周、下半分表示2周))
どちらのブラウザにおいても、ピーク時のCPU使用率は85%以上が表示された。おそらく瞬間的には100%に振り切れているではないかと思う。ほんの3年前のIntel Celeron搭載ノートPCを捨てて最新のIntel Core 2搭載PCを買えという、Intelからのメッセージなのかもしれない。なかなかよくできた広告だ(苦笑)。
ブラウザの比較でいうと、IEよりもFirefoxのほうがCPU使用率が高くなっている。実際、ピーク時のアニメーションのコマ送り状態もFirefoxのほうが顕著で、グラフを横軸方向に比較すると、Firefoxのほうが波形の周期が長くなっている。また、最大のピーク時以外にも、Firefoxでは、CPU使用率30%程度の2番目のピークが有意に存在する。
Firefoxについては、CPUやメモリなどの資源を(IEよりも)多く使用しているという報告が様々なサイトでなされている。Firefox側もその点は認識しているようで、たとえばFirefoxサポートページの「CPU usage」(英語)に対策方法が述べられている。同様の内容を日本語でまとめたブログ記事「Amigomr の徒然日記 : Firefox の高 CPU 使用を防ぐ方法」もある(このAmigomrさんという方はMozilla Japanで翻訳を担当なさっているらしい)。
なお、どちらのブラウザも、半分表示の状態ではCPU使用率が有意に低下し、非表示状態ではほとんど0%となった。この点について、産業技術総合研究所の高木浩光さんのブログ記事「高木浩光@自宅の日記 - 環境負荷の高いIBM広告」を見つけた。(2005年の時点ですでに当該の問題に気づいてブログ記事にしておられる。さすがだ。)この記事の事例では非表示状態でもFlashバナー広告がCPUを使用し続けているとしているが、今回の私のテスト結果は異なっていた。その記事にトラックバックしているブログ記事「こがねむしblog - 環境負荷の高いIBM広告」でも異なる結果(私と同じ結果)だったようだ。(PC環境やFlashアニメーションなどの条件によって、そのあたりの挙動は違ってくるのかもしれない。)
ということで、閲覧しないWebページは放置せずに閉じるか、ページスクロールしたり他のウィンドウやタブを前面に表示したりしてFlashアニメーション広告を隠すといったグリーンIT対策が今後ユーザに求められるかもしれない・・・って違うだろ(笑)。
そもそも、「インテルの世界最高水準の電力消費低減テクノロジー」「インテルはグリーンITをこれからも牽引します」といった調子でグリーンITを啓蒙する広告が、そんな電力浪費Flashアニメーションをむやみに使用してしまっては言行不一致である。日経BP「グリーンIT」のサイト管理者にそうした意識があれば素晴らしいが、広告収入を得る立場ではまあ無理だろう。広告主のインテルにこそ、もっと高い意識を持って欲しいところだ。Intel Core 2の性能が適切に活かされる出番は他にいくらでもあるだろう。
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