« 金融商品取引法の広告規制についてのコラムを執筆、掲載した | メイン | 地デジのB-CASカードを譲り受けて使用する行為についての一考察 »

2007年11月11日

「ダウンロード違法化」について文化庁にパブコメしてみた

著作権について最近、著作権を侵害している違法サイトからのダウンロード行為を、私的使用のための複製 (著作権法第30条) の適用除外とする (違法とする) ことについて、様々な議論が展開されている。

その震源地である、文化庁の文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の中間整理では、「第30条の適用を除外することが適当であるとする意見が大勢であった」と総括されている。そして、その中間整理について、先月から文化庁がパブリックコメント (意見公募手続) を実施している。パブコメ提出の締切は4日後 (2007年11月15日) である。

思うところがあって、以下のような短いパブコメを個人として提出してみた。

(1.~4. は、個人/団体の別、氏名、住所、連絡先を記載)

5. 該当ページおよび項目名:
104ページの「違法録音録画物、違法サイトからの私的録音録画」について

6. 意見:
ダウンロードの違法化は、権利者による損害賠償の二重取りを可能にしてしまう問題がある。現状でも、公衆送信した者に対しては、送受信の数量と著作物の販売額に応じた損害賠償請求が可能である(著作権法114条1項)。もしもダウンロードも違法化すれば、個々のダウンロードした者に対しても、著作物の販売額以上の損害賠償請求が可能となる(114条3項、4項)。権利行使の困難さについての議論以前の問題として、そもそもこのような立法は権利の過保護ではないか。

なお、ファイルローグ事件判決の記事 (Internet Watch) をあらためて確認すると、「販売額」は「使用料」としたほうが正確だったかもしれない (意見の主旨には影響しないが)。

以下、パブコメしてみた背景などについて述べる。

先の小委員会の中間整理においては、ダウンロード違法化は「情を知って」(違法録音録画物や違法サイトと承知の上で) 行う場合に限定されており、また、刑事罰は設けないとされている。利用者保護の観点からそうしているとのことである。

そうだとしてもダウンロード違法化には反対だという声がネット上では目立つ。しかし、先の小委員会では、IT・音楽ジャーナリストの津田大介さんが一人だけ反対論を唱えていた。中間整理には (少数意見として)、「違法対策としては、海賊版の作成や著作物等の送信可能化又は自動公衆送信の違法性を追求すれば十分であり、適法・違法の区別も難しい多様な情報が流通しているインターネットの状況を考えれば、ダウンロードまで違法とするのは行き過ぎであり、インターネット利用を萎縮させる懸念もあるなど、利用者保護の観点から反対だという意見があった。」と記載されている。また、ITMedia の記事「津田大介さんに聞く(前編):「ダウンロード違法化」のなぜ ユーザーへの影響は」「津田大介さんに聞く(後編):「ダウンロード違法」の動き、反対の声を届けるには」では、主張の詳細説明と同時に、パブリックコメントの重要性を津田さんは呼びかけていた。

こうした議論をきっかけに、ネット利用者の意見を集約して提言するための任意団体として、MIAU (Movements for Internet Active Users: インターネット先進ユーザーの会) が津田さんらを中心メンバーとして先月に設立されていた。そのMIAU によるパブコメ最終案に、おおよそ反対論は集約されている。MIAU はパブコメの概要を自動的に作成するプログラムまで公開しており、一般のネット利用者にもパブコメの提出を呼びかけている。

なので、反対論が出尽くしているようならば、いまさら無名の私ごときが何かを言うまでもないと思っていた。パブコメの自動作成プログラムなんぞ、同じ意見の焼き増しに過ぎず、多数決的な局面では意味があるかもしれないが、私は使う気になれない。だいたい、パブコメなんて今まで一度も出したことがない。今のところは MIAU とかに参加するつもりもない (興味はゼロではないが様子見、といったところ)。

ただし、その MIAU のパブコメ最終案を含め、ネット上の意見をいろいろ検索、閲覧してみても、損害賠償の二重取りの問題についてはほとんど誰も言及していない。スラッシュドットジャパンにおける IZUMI162i6 さんという方の書き込みを辛うじて見つけたくらいである。

著作権法第114条 (損害の額の推定等)には、すでに第1項で、違法な公衆送信におけるダウンロードの数量を元にした損害額の推定方法が規定されている。違法サイトの運営者等に損害賠償請求する際には、そうした推定が適用可能である。そのうえさらに、個々のダウンロードした者にも損害賠償請求を可能にするのは、権利の過保護ではないか。

懲罰的損害賠償として考えるなら、二重取りは問題ではないかもしれない。しかし、日本の法体系では、本来の損害額を超える損害賠償請求は認めないことになっている (はず)。文化審議会著作権分科会の別の小委員会 (司法救済制度小委員会) でも、懲罰的損害賠償について議論はしたが見送った模様である。

現状ではダウンロードした者の特定や「情を知って」の立証が難しいという主張もあるだろう。そうした主張は、「だから無益だ」という導出とともに、反対論からも聞こえてくる。しかし、将来にわたってずっとそうであるとも限らない。立法として、そうした権利行使の困難性を前提として二重取りの余地を残してしまうのはおかしいと思う。

・・・というようなことを、ほとんど誰も言及していない。私の考えがズレているのだろうか?正直言って、素人の私には分からない。でも、とりあえず言ってみることにした。そういう次第である。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.blog.ocn.ne.jp/t/trackback/209735/7089070

この記事へのトラックバック一覧です 「ダウンロード違法化」について文化庁にパブコメしてみた

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。

最近の記事

最近のトラックバック

Powered by Blogzine[ブログ人]
ブログ人登録 2008年03月15日