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2007年9月22日

リタリン大量処方「東京クリニック」にみる Google AdSense の弊害

難治性うつ病などの治療に使われる一方で依存症の危険が指摘されている向精神薬の塩酸メチルフェニデート (商品名「リタリン」) を不適切に大量処方していた「東京クリニック (東京都新宿区)」。そのクリニックに東京都と新宿区保健所が立ち入り検査したとか、製薬会社が効能・効果の記載からうつ病の削除を検討しているとか、そんなニュースがここ数日伝えられた。

この東京クリニックというところは、ネット上のその筋では有名だったらしい。Google や Yahoo! JAPAN でも大々的な宣伝を展開しており、「リタリン」で検索すると、現在でもトップに広告が表示される。その広告を見て薬欲しさに来院する依存症患者も多数いただろう。


(Google にて「リタリン」で検索した結果を2007年9月22日抜粋)

(Yahoo! JAPAN にて「リタリン」で検索した結果を2007年9月22日抜粋)

いちいち「正しい診断・治療・薬の処方」と言い張っているところが象徴的でもある。

そもそも、薬品名をキーワードにして医療機関がネット広告を打つというのは、薬の処方自体をウリにしているわけで、診断・治療が主であるはずの医療機関として不適切ではないか。まっとうな医療機関ならば、病名の「うつ病」をキーワード指定するだろう。薬局が薬を宣伝するのとは訳が違う。

東京クリニック自身によって広告投稿が取り下げられることを期待する。あるいは、遅くとも行政指導が下るなどの明確な理由が発生した際には、不適切広告として Google や Yahoo! JAPAN (その子会社のオーバーチュア(Overture)) が削除することを期待する。いつどのように広告を再審査するのかは難しい問題だとは思うが。

さて、今回の件を伝える Web 上のニュースをいくつか見ているうちに、コンテンツ連動型広告の Google AdSense (アドセンス) を導入している新聞社や通信社の記事にも東京クリニックの広告が堂々と表示されているのを見つけた。


(時事通信「時事ドットコム:リタリン不適切処方で立ち入り=新宿のクリニックに-東京都」(2007年9月18日)を2007年9月22日抜粋)

東京クリニックといい、その下の「うつ病でもできちゃった」といい、実に嘆かわしい。Google はもとより、ネットについて批判的な言説の多い旧来のメディアも、読者の注意を喚起することなく、こうしたいかがわしい広告のクリック数に応じた収入を得ていることになる。

他の新聞社 Web サイトの記事でも東京クリニックの広告は表示されており、たとえば、朝日新聞 (asahi.com) の記事読売新聞 (YOMIURI ONLINE) の記事 でも確認できた。

そして、産経新聞 (Sankei WEB) で見かけた記事では、これまたひときわ興味深い状態となっている。


(産経新聞「「うつ病」効能の削除検討 リタリン乱用で製造会社|科学|カルチャー|Sankei WEB」(2007年9月21日)を2007年9月22日抜粋)

きっと、何らかの判断があって「東京クリニック」という名前は記さず、「東京都新宿区の診療所」と表記したはずである。それが、その直下の広告によって台無しになっている。

なお、日本経済新聞 (NIKKEI NET) の関連記事の場合、Google AdSense の対象となる記事の分野が「スポーツ」「新製品」「リリース」などに限定されているため、当該広告は表示されていない。批判の対象としているはずのいかがわしい業者の広告が自動表示されてしまう危険を考えれば、せめて一般のニュース記事は Google AdSense の対象外としておくべきだろう。(ただし、日経の「新製品」「リリース」では、新製品発表やプレスリリースに合わせた広告リンクが無チェック状態で表示されてしまう危険があるため、その点については、読者にとっては他紙よりも注意が必要である。)

自身が広告媒体であるはずの新聞社の Web サイトが Google AdSense を導入することの問題点は、以前の記事「Google AdSense を導入する新聞社の免責主張は無責任な二枚舌」にも書いた。収益におけるそうした広告への依存度が高まれば、それこそ、批判を含む表現の自由の阻害要因になりかねない。やはり、報道機関は Google AdSense のような他社のコンテンツ連動型広告システムの是非を再考すべきである。

なお、このブログ (ココログフリー) にも Google AdSense は導入されており、この記事の内容に連動して東京クリニックの広告がこの下に表示されてしまうかもしれない。あらためて、東京クリニック、ココログ (ニフティ)、Google のいずれかによって広告が削除されることを期待する。そして、これほど問題視されている広告主の広告がいつまでも削除されないようなら、やはり他のブログサービスへの移転を考えるべきだと思わざるを得ない。

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ブログ人登録 2008年03月15日