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2006年3月 5日

小形克宏さんからレビューを頂いた

先月気づいたのだが、勤め先の大和総研で執筆、掲載していた、「漢字文化圏における文字コードの過去・現在・未来」というレポートに、小形克宏さんのブログ (もじのなまえ) でレビュー (「キャラクターセットの情報交換からグリフセットの情報交換へ」) を頂いていた。

小形克宏さんは、INTERNET Watch の連載企画「小形克宏の「文字の海、ビットの舟」―― 文字コードが私たちに問いかけるもの」で知られる方である。そもそも、私はこの方に触発されてレポートを書いたようなものであり、レビューを頂けたこと自体、本望である。当のレポートについては、立てた主題の壮大さと比して、時間もページ数も私の能力もいささか不足し、個人的には少々消化不良で終わってしまった感がある。それでも言いたかったことはそれなりに伝わっていたようで、評価して頂き大変うれしく思った。どうもありがとうございます。

以下、いくつかコメント。

それから文字についてスッキリ視点が整理されていることも特徴。今まで僕はグリフ(Glyph)*1をJIS X 0208などにおける「字体」と、本当に同じに考えてよいのかためらっていましたが、この文章ではきっぱり同じに定義しており、僕としては「そっか、これでよかったんだ」と力を得ました。となると、グリフを包摂したものが文字コード規格の「キャラクター」(正確には制御文字を除いた図形文字)であるということになりますね。こうすればAdobe-Japan1-5なんかのグリフセットを、JISなどのキャラクターセットと同じ文脈で論じ分けることができます。おお、一歩前進だ。

(もじのなまえ - キャラクターセットの情報交換からグリフセットの情報交換へ)

「グリフ (glyph)」と「字体」について、当のレポートでは、「きっぱり同じに定義」ではなく「同義と見なす」とした (PDF の28ページ)。小形さんと同様に私もかなり迷い、最終的には、レポートの脚注にも記した情報処理学会・情報規格調査会「文字コード標準体系専門委員会報告書」(2002年)  におおむね倣った。この報告書には以下のように記されている。

– 字体 (glyph)
文字の抽象的な形 (骨格) の概念で、文字の骨組みなどともいわれ、具体的に視覚化することは不可能である。(ISO/IEC TR15285、国語審議会資料などから。) 本委員会では、漢字部首も符号化文字に含まれる、という立場から、部首にも“字体 (glyph)”が存在すると考える。

(情報処理学会・情報規格調査会, 「文字コード標準体系専門委員会報告書」 p.69, 2002.)

つまり、「字体」の英訳自体が「glyph」となっている。漢字の議論をする際には、これが適切だろう。そうすれば、(漢字の議論において) 「文字コード」と「グリフセット」を、字体包摂の有無によって明確に区別可能となり、議論がしやすくなる。小形さんのご指摘の通りである。

ただ、たとえばアルファベット2文字の「fi」が uniscribe によって一つのグリフとして扱われるということはあるし、「字体」と「glyph」は、一般的な定義としてはまったく同じではないのだろう。あくまで当レポートにおいては差し支えない、ということで、「同義と見なす」とした。「見なす」というのは、法律などで多用される、便利な表現である (濫用は禁物だろうが・・・)。

なお、参考文献として小形さんの連載 (「文字の海、ビットの舟」) を挙げさせていただいたことについて、現在は URL が変更されているとのご指摘を頂いた。勤め先の担当者に連絡して訂正させて頂いた。ご推察の通り、昔から拝読しています。連載の今後に期待しています。

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